「第141回事業計画発表会 講評・総括より *2014.4.14」
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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏
1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。
2012年3月教授を退官後、株式会社インディペンデンツ顧問に就任。
インデペンデンツクラブ会長
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女性社長と若い社長の業種は全く異なるが、リアルを知り、リアルをWeb活用で事業加速をするという発表であった。事業計画発表会の支援参加者やコメンテーターから厳しいコメントもいただいた。Web時代の新事業創出の典型的な、かつアグレッシブな発表であった2社につき、講評・総括をします。1.株式会社EL JEWEL:エルジュエル(代表取締役 森 みどり氏)
事業内容は、インテリア家具・雑貨、シャンデリアの店舗販売及びネット通販、内装デザイン・施工工事、電気工事である。
転勤族の専業主婦であった森氏は、多くの買い物をインターネットで購入するのが通常の購入のパターンであった。母親譲りのサービス精神を引き継ぎ、より美しい社会と人々の幸福のために商材を生み出したいということが、起業の原点である。森氏は、映画や雑誌で見るシャンデリアに魅せられていたが、適切なサイトがないことに気付き、事業の可能性を信じて2006年に栃木県宇都宮で起業した。その後、千葉県浦安、東京麻布十番に会社やショールームを移転しながら現在に至っている。
個人顧客の多いシャンデリアは、前受金で注文を受けて、中国で生産し、顧客に届けるという高収益・短納期モデル、貸倒ゼロで、5億円の売上を計上するに至った。開発提案は、森社長のセンスに依存し、インテリア家具・雑貨や内装デザイン・工事にまで事業を拡大し、ネット通販から店舗販売に事業を拡大し、IPOを目指しているが、次の3点につき配慮する必要がある。
① 既にシャンデリア取扱いメーカーとしては日本No.1の地位を築いているとのことであるが、インテリア家具・雑貨全体に事業構造を拡大していくには、森社長一人に依存した直感センスから、顧客・商材管理の精度を高め、組織で事業を遂行する会社に脱皮する必要がある。
② 現在BtoCビジネスが60%で、受注・前受金後の発注で、資金的には負担の少ないビジネスの為、投資効率が極めて高いビジネスになっているが、BtoBビジネスの比重を高め、販売ショップも展開することによって事業拡大を図ろうとしている。資金・在庫管理が全く異なるビジネスに進出する認識が必要になる。
③ 一般の主婦の起業で、ヨーロピアンインテリア業界でNo.1となるためのIPOを前提にした資金調達のプレゼンであった。設計施工までの事業拡大の話も含まれていたが、どの事業領域でワクワクさせるブランディングを確立し、多様な事業のリスクをどのようにとるのか、先行している業界に挑戦する重点分野を明確にする必要がある。
2.株式会社FiNC:フィンク(代表取締役 溝口勇児氏)
事業内容は、オンラインダイエット家庭教師「REPUL」の運営、遺伝子・血液検査の受託解析事業である。
サラブレッドの両親の元で生まれ、非凡な少年であったという溝口氏は、17歳で誘われてフィットネスクラブに就職した。5年間トレーナーとしての能力を磨き、23歳で倒産しそうなジムの再生請負人となり、2012年27歳で会社を起業した。現在の若者の健康志向や高齢化社会の晩年の不健康期間の長期化等多くの課題の根幹に、ダイエット、すなわち肥満解消にあるのではないかと考えた。「もしあなたがもっとホッソリしていたら人生が変わっていたと思うか」の問いかけに対して、多くの若者が変わっていたと反応している現実を事業化し、Web時代に相応しいビジネスモデルとして、本事業を起業した。
オンラインダイエット家庭教師「REPUL」の運営基本形は、2か月間のお試しコース2~20万円、3月からサイトを開始した。将来的には血液等の検査を含む受託を入口に、Webでダイエット診断を行い、会員化し、栄養士などのプロのアドバイスを非対面で受けるクラウド型ダイエットコミュニティーへ誘い、会員に食材提供まで行おうという壮大な生活習慣変更支援型のビジネスモデルである。
多くの専門家・団体とアライアンス戦略によって、これを短期間に事業を急拡大するという夢を語る元気な発表であったが、IPOを目指すに当たり、次の3点を配慮する必要がある。
① Web時代の健康ビジネスで、アマゾンのような事業横串刺し的なポータルになる戦略であるが、健康・医療関係には既存の事業の壁がある。健康ビジネスには多様な許認可の壁がある。規制の低い業界からアライアンスする等、十数年携わった健康ビジネスの経験を活かした優先順位戦略の工夫が必要である。
② 健康ビジネス関係の資格を取りながら家庭の主婦で子育て中の為、一日8時間仕事に従事することが困難な女性が多いので、ダイエットコミュニティー運営の支援ネットの構築は可能であろう。ただし、サービス品質を一定に維持するための教育を含む社内体制の整備はこれからである。
③ 日本には「ダイエット-健康の維持-生き生きとした生活環境」という因果関係をトータルで地方自治体等と共に研究・実践している方々もいる。若さの特権でもあるが、現在ほとばしるような思いが先行し、支援・関係者と思われる方々とネットワークを急拡大している感がある。何をキラーコンテンツとするかを明確にする必要がある。