「「シリコンバレーの青空」」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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ベンチャー・ハビタット(生息地)と言われるシリコンバレーが数多くの革新的なベンチャー企業を輩出できている重要な背景の一つに、シリコンバレーの天候があるのではないかと筆者は思っている。筆者は1990年代からシリコンバレーに出張でよく訪れ、2000年前後には2年近く居住した経験を持つ。居住して改めて気付かされたのがシリコンバレーの青空の素晴らしさであった。ご存知方も多いと思うが、シリコンバレーでは夏場が乾季で、4月から11月くらいまでほとんど雨が降らない。気温は夏でも30度を超えることは稀で、雨季の冬でも10度を下回ることは少ない。乾季の夏場は毎日抜けるような青空の日が続き、その青空がシリコンバレーの人々の気持ちを明るく前向きにしてくれる。
100km弱北に位置するサンフランシスコは、半島の突端にあるため、シリコンバレーほど夏場でも雨が降らないわけでもないようだが、シリコンバレーでは天気予報が要らないくらい晴れの日が続く。それでよく水不足にならないなと思われるだろうが、冬場の雨(ただし、日本の梅雨のような感じはない)とサンフランシスコ湾の東側にある山の雪解け水が水不足を防いでくれているのだという話しを聞いた。
米国では小・中・高・大、いずれの教育機関も1年が9月に始まり夏休み前に終わることはよく知られている。そのためシリコンバレーでは、いずれの学校の入学式も卒業式も乾季の夏場に行われる。そして乾季の夏場に行われる結果、私が知っている限りでは屋外で行われる。雨の心配がないからである。私事で恐縮だが、筆者の息子はシリコンバレーの高校と大学を卒業したが、彼らの卒業式が屋外で行われたのには驚いた。
シリコンバレーで聞いた冗談の一つに、シリコンバレーの夏場に雨の日が3日続くと人々は鬱になって自殺者が増える、というのがあった。逆に言えば、正にそういえるほどシリコンバレーの青空はそこに住む人々の気持ちを躁にしてくれているように思う。
マイクロソフトの本社はシアトルにある。それは、創業者のビル・ゲイツの故郷であるからなのだろう。しかしそれに加えて、シアトルは雨の多い町なので、ゲイツが、外に出て遊べない従業員がよく働いてくれるのではないかと考えた、という話しを聞いた。ならばシリコンバレーは、外で遊べる機会が多くて人々は働かないのかもしれないが、少なくともシリコンバレーの青空は、人々を楽観的にし、リスクを恐れず何事にも挑戦する気持ちを育んでくれているのではなかろうか。
日本にいた時には分からなかったが、晴れの日が続くシリコンバレーに住んでみて、天候が人々の精神に与える影響が大きいものであることを改めて感じた。最近でもシリコンバレーに行く機会はあり、訪れて最初に感じるのはカラリと晴れた天気の気持ちよさである。ベンチャー・ハビタットと言われるシリコンバレーの秘密が他にも多々あることは確かだが、シリコンバレーの青空もそうした重要な秘密の一つと考えてよかろう。
※「THE INDEPENDENTS」2014年2月号 - p19より