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「俺の株式会社の企業戦略」

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俺の株式会社
取締役副社長 安田 道男さん

1961年生まれ。慶應義塾高校卒業。1984年慶応義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。1987年ケンブリッジ大学留学。1989年米国野村ニューヨーク勤務後、エクイティソリューション部長。2004年UBS証券入社。2006年ウェル・フィールド証券社長を経て、2010年VALUECREATE(当社前身)取締役就任。

1.「俺の」シリーズ好調の理由は?
急速に成長できるポイントの一つに、シェフがそれぞれメニュー決めをするなど各店舗に独自性があるため、「俺のフレンチGINZA」に行かれたお客様が今度は「俺のフレンチTable Taku」に行っていただくといった相乗効果を発揮していることが挙げられます。人口のわずか数%を相手にする従来のグランメゾン型ビジネスではなく、人口の圧倒的大多数の美味しいもの・本物を普段着の価格で食べたいという人達に貢献する事業に従事したいという志を持ったスーパーシェフ達が、今、会社の評判を聞いて、どんどん集まっていただいていることも成長加速要因だと思います。

2.お客様が求めている新業態とは?
セントラルキッチンを基本に店舗展開を考える場合、確かに効率性は達成されるかも知れませんが、どこのチェーン店も同じような料理に偏り、結果としてお客様からの飽きがすぐ来てしまうと考えております。又、セントラルキッチンで働きたがる名料理人はほとんどおりません。そこで敢えて我々はセントラルキッチンを否定し、普通の商品を格安で出すのではなく、最高級品・希少価値のある商品を最高の料理人が作りながらも、徹底的に安く出すという戦略を行なっております。華美な内装や、広告宣伝にお金をかけず、すべてその料理の質と価格の安さに一点集中することで、非常識なまでのコストパフォーマンスを達成する作戦です。

3.高回転、高原価率、広域商圏を活用して従来のビジネスモデルを革新する
同じ65%の原価率といっても、さすがにこれだけ高級なものをこれだけ買う人は滅多におりませんから、我々の仕入値段は極限まで安くなります。普通のお店が1000円で買っているものを、我々は800円で買えているとすると、800円÷65%=1230円が売価になりますが、1000円が仕入値とすると、1000円÷1230円=81.3%の原価率が普通の感覚で感じる原価率なのです。つまり、我々が言っている65%の原価率とは、普通のお店が真似しようとすると原価率を81.3%かけないと同じ原価率にはならないということなのです。

4.「俺のフレンチGINZA」「俺のフレンチ・イタリアンAOYAMA」・・・4回転、フード原価61.5%、客単価3,000-4,000円、利益率14.3%
通常の高級店舗では、フード原価率30%、経常利益率は5%です。それに対して、「俺のシリーズ」は、フード原価率64%でありながら、経常利益率9.2%です。実際の数字をみるともっと違いは明白です。お客様の来店数が、通常高級店の12倍。これは1時点の入店者数が、3倍で回転数が4倍のため、3×4=12倍と、商品価格が1/3以下であっても売上金額は通常高級店の3.5倍です。更に、「俺のフレンチ・イタリアンAOYAMA」では、JAZZを投入したり、交代制で営業時間を延ばしたりすることで、フード原価率80%まで引き上げても、経常利益は通常の高級店の実に14.6倍になる計画です。

5.「俺の」シリーズの世界戦略
現状、日本の調理技能者の技術レベルは世界一ではないでしょうか?フランスにおけるフランス料理界での日本人料理人の地位は高く、ミシュラン3つ星、2つ星、1つ星のフレンチレストランで日本人料理人が主要ポストにいないお店はもはやもう存在しません。この凄い人達によって支えられていることが大前提で、これが出来れば世界中に出て行ける。どこの国に出て行ってもその国の人達に喜んでいただけるというのが基本的考え方です。

6.俺の株式会社の経営観
我々の考え方の大部分は、稲盛名誉会長率いる盛和塾の教えからきております。それは単にビジネスで成功することだけを目指すものではないということです。新たなお客様のためになる、お客様の求められるものをリスクを取って開発し、それを世界規模で展開し、どれだけ多くの人達に喜んでいただけるのか?ここに邁進したいと思います。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2014年1月号 - p16にてご覧いただけます