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「ひょうご・ベンチャー・ファーム&THE INDEPENDENTS CLUB(2012年11月13日)レポート」

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■ パネルディスカッション レポート
「湧き出る有望ベンチャー、注目集める兵庫県」

薮内 光 氏(神戸大学連携創造本部 特命教授)
幸田 徹 氏(兵庫県産業労働部 新産業情報課 課長)
後藤 靖 氏(神戸市産業振興財団 経営支援部長)
伊藤 敏弘 氏(SMBC日興証券株式会社 大阪企業法人課 課長代理)
モデレータ:藤本 良一 氏(日本ベンチャーキャピタル株式会社 西日本支社)

―神戸大学の取組み

藤本:知的財産部門の取り組みを教えて下さい
藪内:神戸大学で生み出された知的財産の管理およびライセンシングを通じて、研究成果の社会還元を促進することがミッションです。大学発技術の掘り起こしやベンチャー設立支援から、事業計画の相談やインキュベーション施設への入居斡旋、金融機関紹介など、総合的に支援をしています。

藤本:神戸大学発ベンチャーの状況はいかがでしょうか
藪内:これまでに累計37社が誕生しており、直近では年間1社から2社が新規設立されています。神戸大学大学院工学研究科の石田謙治准教授の研究成果をベースとした、薄膜型の赤外線センサ開発をおこなうセンサーズ・アンド・ワークス(代表取締役:堀江聡)は、時流に合った技術で今後の成長に期待しています。また、来年には医学部発の医療機器ベンチャー設立も予定しています。

藤本:経営学部やビジネススクールとの連携はあるのでしょうか
藪内:神戸出身の経営者を招いてアントレプレナーシップセミナーを開催しました。ハイテクベンチャーにとっては経営人材の獲得や技術経営を学ぶ良い機会なので、今後も強化していきたいと考えています。

―兵庫県の取組み

藤本:兵庫県のベンチャー支援について教えて下さい
幸田:世界をリードする「ひょうご発先進企業」創出のために、SPring8やスーパーコンピュータ「京」など世界最先端の研究基盤や大学等の研究機関の集積を活かし、企業の成長ステージに合わせた育成支援をおこなっています。ひょうご・神戸チャレンジマーケットや国際フロンティア産業メッセを通じたマッチング支援、ひょうご産学官連携コーディネータ活動促進事業を通じた支援者育成、兵庫県COEプログラム推進事業を通じた研究開発支援などが主な活動内容です。

藤本:ファンド出資など資金面のバックアップも強力です
幸田:平成8年より、ひょうご産業活性化センターによる直接投資事業を展開してきました。平成17年からは、「ひょうご産業活性化ファンド投資有限責任組合」への出資をおこない、第一号(平成17年4月設立)では15社・4億3662万円、第二号(平成18年11月設立)では18社・8億5760万円の投資実績があります。また、平成23年8月には、日本ベンチャーキャピタルをGPとして迎え、第三号ファンドを総額10億円で設立しています。

藤本:「兵庫県に投資シーズはあるのか」とよく聞かれますが、私は宝の山だと考えています。第三号ファンドでは、今年2月に株式会社インキュベーション・アライアンスに出資させていただきました。今後も成長意欲の高いひょうご企業に投資をしていきたいと考えています。
幸田:第一号からは1社が上場を果たしましたが、雇用創出が第一であり、非常に効果はあります。また、起業よりも廃業が上回っている中、潜在的なシーズの掘り起こしを行なっていく必要も感じています。そのために、より小規模なエクイティファイナンスを手掛ける体制も検討しています。10年20年先の産業振興のために、今から種を蒔いていかなければなりません。

―神戸市産業振興財団の取組み

藤本:財団の活動や特徴について教えて下さい
後藤:当財団は、神戸地域の産業活性化および雇用創出への寄与を目的に、神戸市100%出捐のもと平成4年に設立されました。創業・起業を啓蒙する「KOBE創業塾」から、創業直後の企業を支援する「神戸開業支援コンシェルジュ」、中小ベンチャー企業のビジネスプランを評価・認定し支援をおこなう「KOBEドリームキャッチプロジェクト」など、ライフステージ毎の支援をワンストップでおこなっていることが特徴です。

藤本:KOBEドリームキャッチプロジェクトの活用状況はいかがでしょうか
後藤:平成17年よりビジネスプランの募集を開始し、累計応募数846件から70件を認定しました。認定プランに対し、販路開拓や広報支援、専門家派遣など個別支援をおこなっています。今後はより情報発信を強め、創業塾や大学とも連携しながら、新規創業者からの応募を強化していきたいと考えています。

―兵庫県のIPO状況

藤本:兵庫県はIPO社数が116社と、全国で5番目に上場企業が多い地域です。これは、ベンチャーの街と言われる京都を上回ります。今後の兵庫発IPO企業の期待感についてお聞かせ下さい。
伊藤:今年11月8日に、株式会社アジュバンコスメジャパンが東証2部への上場承認を得ました。これは2008年にカルナバイオサイエンス株式会社(JQG:4572)が上場して以来、4年振りです。他地域と比べ、神戸には高い技術力を持つ企業が多く、大手企業との取引も活発です。また、海外進出意欲も旺盛で、IPOを通じた資金調達を希望する企業も増えています。

藤本:ポテンシャルがある一方で、課題は何でしょうか
伊藤:事業が立ち上がるまで、または技術がものになるまでの過程で、資金繰りに苦しんでいる企業が多いように感じます。また、技術力は高くても、知財面で悩みを抱えている企業も少なくありません。当グループの総合力を活かし、資金供給だけでなく、有益な情報提供もできたらと考えています。

藤本:成長ポテンシャルがあっても、一人ではなにもできません。今回イベントを開催した目的は、人と人とのつながりを通じて、ビジネスの幅を広げたり、課題解決ができる支援者と出会ったり、ベンチャー企業が育つ土壌づくりができたらという想いからです。この会をきっかけに、兵庫県のベンチャーを盛り上げていきたいと考えています。本日はありがとうございました。