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「大阪インデペンデンツクラブ」

公開


第一部 パネルディスカッション
「関西発IPOの活性化」
山田 茂善 氏(太陽ASG有限責任監査法人 総括代表社員代行)
奥原 主一 氏(日本ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長)
西村 文和 氏(SMBC日興証券株式会社 事業法人本部長補佐)
鮫島 正洋 氏(内田・鮫島法律事務所 代表弁護士)
<モデレータ> 國本 行彦(株式会社インディペンデンツ 代表取締役)


―関西発IPOの状況について

西村:ピーク時の2006年には40社の関西企業が株式公開を果たしたが、2007年以降、関西発IPO社数は激減し年内は4社に終わるのではという見込み。一方東京ではSNS関連の企業をはじめ、IPO意向がものすごく増えてきている。ワンテンポ遅れて関西にもその波が来るのではと期待し、関西でもIPO部隊を拡充して支援体制を整えている。

國本:VCの立場からは、IPOの現状を見てExit(売却)方法をどう考えているか。

奥原:投資先のカゴヤ・ジャパン(京都市)が、10億円以上のバリエーションでM&Aされた。多大な労力をかけて上場準備をするよりも良いかもしれないとは感じている。2000年当初の「俺が社長として上場する!」というモチベーションよりも、事業が成長すればよいと考える経営者が増えてきている。

西村:たしかに現状では上場時PER10倍以下が多く、未公開段階の投資家から見れば魅力に欠けるかもしれない。一方で株式市場は不安材料が出尽くし、底打感もあり、これから資金が流れてくるのではと考えている。市場が悪い時期に準備をしておけば、良い時期にIPOできる可能性がある点を強調したい。


―監査法人から見た関西IPO環境

山田:かつては政治の東京、経済の大阪と言われていたように、大阪が変われば日本経済も変わることができると信じている。梅田北ヤードの再開発が進み、マンションもよく売れていると聞いている。IPO低迷について言えば、資金調達額の減少などメリットが小さくなり、上場維持コスト増などデメリットが大きくなっていることが原因である。一番の問題は1000社に1社が不正をしたからと言って、全体のルールを厳格化するのはおかしいという事。不正をする会社をゼロにすることはできない。有効なのは罰則規定を厳しくする事。株式上場の入り口は広げ、成長企業を支援するという本来の目的に立ち返るべき。優秀な経営者がIPOしたくなるような環境を整備していく必要がある。そういう点では、日本より香港や韓国、シンガポールの株式市場の方がよっぽど魅力的。大震災や日中問題などの想定外が容易に起こりうる時代には、リスクをコントロールできる企業による社会の新陳代謝が必要。IPOはまさにその機能を担うと考えている。


―関西のVC状況

奥原:当社では関西のオーナー系企業が株主に名を連ねていることもあり、京大ファンド、同志社ファンド、大阪バイオファンド、そしてひょうご新産業創造ファンドと、関西に特化したファンドを数本運用している。ファンド資金は十分あるので、関西地区で積極的に投資をしていきたい。特に若く元気のよい経営者と一緒に仕事がしたい。業種的にはIT・ライフサイエンス・製造・サービスがそれぞれ25%ずつと、バランスの良いポートフォリオになった。

山田:関西には型破りでユニークな経営者がたくさんいる。これからに期待したい。


―関西の知財活用状況

鮫島:関西では、大阪大学・塚原準教授のマイクロ波に関する技術をベースとするマイクロ波化学株式会社(吹田市)を知財面から支援している。当事務所はメーカー出身者が弁護士・弁理士資格を取得し、主にテクノロジーベンチャーの知財コンサルティングを手がけている。資金やリソースの限られたベンチャー企業が如何にして効率良く、かつ要所を押さえた特許を取得し経営資源に変えていくかがポイント。

西村:素晴らしい技術を持ちながらも特許処理を誤り、IPOできなくなったケースを目の当たりにした。上場審査において、技術系企業の場合は利益計画に大きく影響するため、特許は重要な観点になる。

山田:会計上は、無形固定資産の評価が非常に難しい。特許を見極めるポイントがあれば教えて欲しい。

鮫島:技術の良し悪しと、特許内容の良し悪しを分けて考えることが大事。

西村:昨年赤字でIPOしたスリー・ディー・マトリックス(JQG:7777)という会社はまさにそれに該当する。まだ認可も受けていない段階で、どうやって技術の確からしさを評価するか、全国の大学や提携病院などへ確認した。


―関西発IPOを活性化するために

國本:最後に関西IPO活性化に向けてコメントをください。

西村:IPO支援者間の連携を強化し、関西発10社を目標に頑張っていきたい。

山田:この4名が揃えばIPOできる(笑)。起業家の方に伝えたいのは、いつでも我々専門家に相談してもらいたいという事。成長意欲やスピリッツが何より一番重要である。

奥原:最近の経営者は小さくまとまり過ぎ。売上100億円しか目指さないから、IPOが必要ではなくなる。1000億円、1兆円の企業を目指すなら、IPOすべき。出すぎた杭は打たれない。我々は応援する。

鮫島:ベンチャーが育たない国には衰退の途しか残されていない。戦後の日本を立て直してきた先人のように、60年後のソニーやホンダを創っていきたい。

國本:本日はありがとうございました。(2012年10月2日、梅田センタービルにて)