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「東京インデペンデンツクラブ 特別企画」

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<パネリスト>
岡村 陽久 氏(株式会社アドウェイズ[マザーズ:2489] 代表取締役社長CEO)
杉田 純 氏 (三優監査法人 統括代表社員)
桑内 孝志 氏(SMBC日興証券株式会社 企業法人部 首都圏企業法人課 部長)
谷本 徹 氏 (リード・キャピタル・マネージメント株式会社 代表取締役社長)
廣渡 嘉秀 氏(株式会社AGSコンサルティング 代表取締役社長)

<モデレータ>
國本 行彦 (株式会社インディペンデンツ 代表取締役)

―起業家の立場として、今だったらIPOをするか、もしくは勧めるか
岡村:結論から言えば「IPOはした方がよい」。何か大きなことを成し遂げたいベンチャー企業に対しては強く勧める。また、出来るときにした方がよいということ。企業が旬な時期は何回かしかない。

―投資家の立場から見るとどうか?IPOがいいのか、他のExitがよいのか?
谷本:米国VCはM&Aが8割程だが、それはIPOの基準が高くなってしまったため。私どももIPOしてどんどん成長してもらいたいが、M&Aの方がその会社にとって良い場合がある。そこは冷静に忠言申し上げる。IPOを目指すが、場合によってはM&Aも検討していくということを伝えるべき。そうすれば調達もしやすくなる。

―投資家・企業の両方の視点から見ている証券会社の立場としてどうか?
桑内:岡村社長と同意見でIPOはできるときにすることが重要。最近では、上場後のファイナンスで成功している会社もある。公開会社をどんどん出さないと日本のマーケットは崩壊しかねないというのが証券業界のコンセンサスであるので、規模は問わずにやっていくべき。

―監査法人の立場から見て、昨今の状況について思うところは?
杉田:思ったより株価がつかずに1年間延期した会社が、翌年上場し成功したケースもあれば、平成3年の市場閉鎖により上場までに4年間費やしてしまった会社もある。できるときに上場するというのは同感ではあるが、この先どうかと言われるとクエスチョンかもしれない。これからもっと下がると予想もされるし、欧州危機も懸念される。

―起業家の立場にたって支援されているIPOコンサルからはどうか?
廣渡:こういう状況だと、IPOすべきか悩まれる企業が多数。資金調達面を考えると結論はNoになってしまう。しかしながら、「こういう時期だからこそ、もう一度上場する意味をどこに置くか考えましょう」ということを強く申し上げたい。IPOなくして、本当の意味で強い会社を作ることはできないという信念を持っている。資金調達や人材採用だけでなく、内部管理体制が強化される点が上場メリットとして非常に大きい。会社を育てているのは人材であり組織である。IPOを目指して要請されたことを、きちんと定着させた組織はやはり強い。

―IPOコンサルが関与する意義は?
廣渡:まず、どうすれば効率よく、自社なりのスタイルでIPOができるかということをよく考えてもらうことが大事。その上で、海外市場へのIPOなど、私どもでオプションを提示させていただく。最近は個性的なIPOができる環境にあるのではないかと考えている。他社が消極的な時期にIPOを目指している企業は、“人の行く裏道に道あり花の山”で好機を得られるのではとお勧めしている。

―上場審査は緩和されているのか?
桑内:取引所審査が緩やかになってきている一方で、証券会社は、直接投資家へ販売する責任を意識しなければならないので、以前から比べ緩和している面もあるが、まだ大きくは変わっていない。

―IPO減少要因はリーマンショック以外にJ-SOXもあると思うが
杉田:内部統制は絶対必要だが、その監査レベルをどうするかという問題はある。伝票一枚一枚を洗い出していっても見つかる粉飾は数万円単位だが、本当に見つけなければならないのは億単位の粉飾。それはガバナンスのチェックの方が大事だったりする。

―VCの立場からはどうか?管理体制を構築するためのコストも削減させたいだろうが
谷本:スピードが最重要。つまり、IPO準備のスタートはできるだけ遅く、ゴールは早く。米国では直前四半期で瞬間的に準備する。そのため、弁護士事務所など外部リソースを徹底的に活用している。

―今後IPOが増えるためには、関係者が何をしなければならないのか?
廣渡:アドウェイズ岡村社長は「IPOについては素人で全く分からない。自分は事業を成長させることに専念したい。IPO準備に必要なことは皆さんのご指導に従います」と、貴重な時間を全て事業にあて、外部からビシビシ指導を受けIPOした。それがこれからのIPOスタイルではと思う。

谷本:日本のIPO市場がこういう状況であるのはVCの責任も重い。数を出すことはできないかもしれないが、世界に通じるような起業家を輩出していきたい。

桑内:日頃からの啓蒙活動も必要であるし、このようなイベントに取引所関係者や官庁の方の参加も求めたい。何より、起業家が一番感じ入るのは岡村社長のような経験者の成功体験。これをもっと広める機会が必要。

杉田:意欲のある事業経営者がどんどん出てくる必要がある。そして何より、創業者自身が会社を永続させようとする経営観を持つこと。大学から日本の経営者教育を考えていかないと、いいベンチャースピリットを持った経営者は出てこない。

岡村:上場できたのは日興証券やAGSコンサルティング、VC、皆様のご支援があったからこそだと感謝している。IPOを今後増やしていくために、業績は大前提としてあるが、サポートする方々が増えることが必要だなと感じている。

本日はありがとうございました。