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「第84回 事業計画発表会(2011年9月26日)レポート」

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第一部 講演
「ハビタット化が求められる金融資産」
瀧口 匡(ウエルインベストメント株式会社 代表取締役社長)

日本の経済状況に順応して金融資産が適切に配分されているか、個人金融資産が社会の中で効率的に循環されているか、金融資産のハビタット化(適切な自生化)とVC業界の課題について考えてみたいと思います。

 日本の個人金融資産は、資金循環統計では1,476兆円と、とてつもない金額です。それがどの程度巨大かと言うと、シンガポールの経常収支は約5兆円、産油国ロシアで約7兆円、またブラジルが経常赤字であることと比較するとイメージできます。

一人当たりの金融資産で見ると、日本は823万円、米国811万円、欧米の400万円台と日米が突出しています(2008年のデータ)。そして日本ではそのほとんどを高齢者が持っています。また、年金基金に目を向けると、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世界最大の基金となっています。

ところが、広義の意味における世界の資産運用会社トップ10には、日本の運用会社は一社も入りません。日本生命で26位ほどです。ここに、我が国の資産規模と運用体制の間の大きなギャップを示している一つの事象があります。

日米欧のVCの資産額を比較すると、日本が約1兆円に対して米国約17兆円。VCに占める年金基金の額は、日本が5%に対して米国は42%、欧州ではその多くを年金基金が担っています。また、VCの投資額の四半期の比較では、米国5,000億円に対して日本は92億円と大きな格差が存在します(2011年4半期、為替85円)。

つまり、日本には巨額な金融資産が存在していますが、例えばVCと年金基金の関係において、欧米と比較して資金が循環しているとは言い難く、我が国の金融資産はハビタット化していないと指摘することができます。ここに、われわれVCが抱える諸問題があります。

一方、VCやPEにプロ投資家が求めるある調査では、日本は13%、欧州は16%程度であり、米国ではそれを上回るリターンが求められます。しかし、われわれ日本のVCはこのリターンを出していません。これは、ハビタット化を阻害する要因となっています。

米国ではこの約30年間に出現したベンチャー企業、例えばマイクロソフトなどが世界的なブランド企業になっています。日本ではトヨタ、ホンダ、ソニーなど戦後できた優良企業がブランド上位に依然としてある状態です(Interbrand社より)。近年、VCの活動から世界的な企業が出現していない点が、我が国のハビタット化を阻害している要因です。

われわれVCは、世界で活躍できるベンチャー企業を育てないと、VC業界に大きな資金が循環してきません。そのためには、われわれは相当の努力と結果を求められることになります。


第二部 事業計画発表

1.株式会社フィル・カンパニー(代表取締役社長CEO 高橋 伸彰)

≪参加者の感想≫
都内にコインパーキングが目立つ現状を考えると、非常に着眼点はよいと思います。ただ、建築代金等、オーナーに頼るのみでは厳しいのではとも思います。瀧口様もおっしゃていましたが、証券化も含めて資金調達の再考が必要と思います(監査法人)
現代の不動産ビジネスの1つの方向性を見た思いがします。社長はじめ経営陣の皆様のご苦労も感じましたが、これから規模の経済が働く日が近いことと期待しております。(監査法人)

2.株式会社東洋発酵(専務取締役 高田 敦士)

≪参加者の感想≫
「時代の花形産業」→オンリーワン製品開発で、10年計画で一部上場へと大成功できるビジネス。社長次第。(人材会社)
以前、発酵受託を請け負う会社を担当したことがありますが、当社のような多種多様な対応をしている会社があるとは知りませんでした。発酵の分野は、今後各個人にあった、テーラーメイド医療に不可欠だと思います。独自ブランドORIFERの成功が望まれますので、頑張ってください。(監査法人)

講評・総括 早稲田大学大学院 教授 松田 修一


次回第85回事業計画発表会は10月21日を予定しております。詳細はこちら