アイキャッチ

「空中店舗の共創戦略」

公開


株式会社フィル・カンパニー
代表取締役CEO 高橋 伸彰さん

1977年 長野県安曇野市 生まれ
1996年 西大和学園高校 卒業
2001年 一橋大学商学部経営学科 卒業
オリックス株式会社、アクタスマネジメントサービス株式会社/ASG税理士法人を経て、2005年6月当社設立。米国公認会計士保有。

住所:東京都千代田区飯田橋3-2-6 フィル・パーク飯田橋
TEL: 03-5275-1701 設立:2005年6月3日 資本金:5,000万円
事業内容:駐車場を活用した空中店舗開発事業
http://www.philpark.jp/

―まず、空中店舗「フィル・パーク」についてお聞かせ下さい
これまで未利用だった駐車場上空部分に、文字通り「空中店舗」を建設し、商業施設や賃貸物件として活用いただく事業です。地上部分は駐車場の機能を残したままですので、土地オーナーの方々には新たな収益機会としてご提案しております。現在、原宿、表参道、中目黒等、都内中心に20箇所の実績があります。

―コンセプトが大変ユニークですね
「フィル」という言葉は「Philo-(愛する)」が語源なのですが、「共存共栄」という意味があり、私たちの企業理念です。土地オーナー-テナント-地域社会、文明-人間-自然が共生できる空間づくりを目指しています。空中というワードも、未開発で無限の可能性を秘めているように感じてもらえるようです。土地オーナーの新たな収益機会として、テナントの好立地かつ安価な新しい事業活動の場として、そして近隣地域コミュニティの人が集まる明るい空間として、関わる人全てがメリットを享受できる「三方良し」のビジネスモデルとなっています。

―御社の収益モデルはどうなっているのでしょうか
空中店舗の企画・設計・施工・監理に対する収入と、建物管理などの管理収入が基本です。場所によっては、当社が一括で借り上げてテナントにお貸しするサブリースの形態も採っています。

―土地オーナーにとっての投資回収期間はどれくらいですか
5-10年、立地次第では3年で回収することも可能です。建築コストは規模にもよりますが、おおよそ3000-5000万円です。テナント探しは当社ネットワークからご紹介しています。

―空中店舗で運用するメリットは何でしょうか
駐車場は2-5年の暫定利用目的(実際の平均年数は約10年)の土地が多いため、その期間中に投資回収ができる運用手段は他にありません。さらに、フィル・パークはアルミや鉄骨、ガラスを使用し、意匠性にもこだわっていますので、既存駐車場の集客力向上にも貢献できます。また、本来テナントニーズが高い好立地まで駐車場として活用されているケースも少なくなく、社会全体から見ても、その土地活用は非常にもったいないと感じます。

―この事業のポイントは何でしょうか
空間の目利きが重要と考えています。空中店舗を利用したいテナント側のニーズと、有効活用を望む土地オーナーのニーズをしっかりと把握し、双方の満足する空間を提供することで、私たちのミッションである「スペースオンデマンド」を実現できると考えます。

―テナントから選ばれる理由は何でしょうか
1つは良い場所を安く借りられることです。土地オーナーはすでに駐車場運営という基本収入があるため、テナントは相場より割安で借りることができます。2つ目に、空間の独自性が挙げられます。空に浮かぶショーケースのような高い意匠性を確保しつつも、低コストかつスピーディーに通常考えられなかった立地に店舗展開できるという、路面店や商業施設とは異なる新しい店舗開発の方法として選ばれています。

―活用事例について教えてください
飲食店や物販から、美容系サロン、オフィス等として活用いただいています。最近ではプロモーションスペースや女性専用シェアハウス、保育園、介護施設など用途も広がってきました。三鷹では行政と組んで駐”輪”場の上に空中店舗を建設するなど、新たな試みも進んでいます。これからも多様なバリエーションを取り揃えていきたいと考えています。

―大手メーカーの参入リスクはないのでしょうか
このビジネスは時間も手間もお金もかかります。立地も敷地面積も違う、個々の駐車場に合った企画が必要になるので、小回りが利くことが求められます。一方、プロジェクト単価は高くないため、大手企業のビジネスサイズに合わないようです。駐車場開発会社の参入に関しても、商業テナントに関する知識やネットワークも持ち合わせていないので難しいのではと思います。

―御社の優位性は何でしょうか
コスト・スピード・クオリティです。すなわち、コストを抑えながら集客力の高い空間を創ること、機会損失を起こさないよう施工期間を短縮することです。建材選びから資金調達、施工方法、テナントのニーズ収集など、これまで6年間駐車場の有効活用一本を考え続けてきた集積は、大きな優位性となっており、今のところ競合他社はいません。標準規格もできつつありますが、より安全で魅力的な空間作りのため、日々改善に余念はありません。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2011年10月号 - p16-18にてご覧いただけます