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「「ボーン・グローバル(born global)」」

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國學院大学
教授 秦 信行 氏

野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)

11月7日、140文字のつぶやきが瞬時に発信されるサービスをネット上で展開するツイッター社がニューヨーク証券取引所に上場した。従業員数約2000人。

初値は45.1ドル、公募価格を70%以上上回り、時価総額は約2兆5000億円になった。
創業並びにサービスを始めてまだ6?7年、時価総額、すなわち企業価値で日本の三井物産、JR東海、東京海上などと現状同じ位の企業価値を持った企業が株式市場にあっという間に登場したことになる。

昨年、SNSサービスでナスダック市場に上場したのがフェースブック、創業から約10年、同社の企業価値は現在10兆円を超えている。

ツイッターやフェースブック、少し前に言えばグーグル、ヤフーといった短期間に急成長する企業の最大の特徴は、その事業なりサービスが、創業当初から世界市場を対象にした事業展開を図っていることであろう。こうした企業を「ボーン・グローバル(bornglobal)企業」と言う。創業当初から世界を意識して生まれてきた企業と言う意味である。

20世紀に生まれた企業は、現在世界市場で活躍している企業でも、まずは特定の国に生まれその国の市場を開拓した後、段階的に世界市場に出て行くのが普通であった。

世界市場への進出についても、まずは輸出を拡大し、販売拠点を現地に置くことで世界の市場を知り、その上で生産拠点やそれぞれの国々での統括本部、ないしは世界での地域本部を設けてグローバル化を図っていくというのが経営学で教える戦略セオリーであった。そして、こうした形のグローバル化を、企業の多国籍化、多国籍化戦略とも呼んでいた。

ところが21世紀前後に生まれた「ボーン・グローバル企業」を見ると、20世紀企業のようにステップを踏んで世界進出を果たすのではなく、企業の誕生と同時に世界を見据えており、ある意味では世界市場での展開を視野に入れた上で創業しているといってもよい。

このような「ボーン・グローバル企業」が生まれている背景には、世界で普遍的に受け入れられる技術やサービスが開発されていることが挙げられよう。特にインターネットを利用したサービスについては、使用言語を変えるだけで、そこの国の人々にも共通して供給でき受容されるサービス内容になっている点が大きい。つまり、それぞれの文化の違いによって製品やサービスをその地域や国に合う形に調整するローカライズの必要性が少ない点が「ボーン・グローバル企業」を生み出す大きな要因と考えられる。

その意味では、日本から「ボーン・グローバル企業」が出て来てもおかしくない。しかし、残念ながらそうした企業を日本企業、日本のベンチャーの中に見つけることは難しい。現状見る限りその多くは米国発の企業、ベンチャーなのだ。それは、日本語と言う言葉の問題よりも、創業当初から世界を見据え、世界を相手に事業を展開しようと考える起業家が少ないこと、つまり起業家の意識の問題なのではなかろうか。これからの若い起業家には是非「ボーン・グローバル」を特に強く意識して欲しい。

【松田修一】「世界にはばたくグローバルベンチャー」(パネルディスカッションレポート)

※「THE INDEPENDENTS」2013年12月号 - p15より