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「CB(Convertible Bond)の活用」

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株式会社インディペンデンツ
代表取締役 國本 行彦 氏

1960年東京都豊島区出身。84年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。2006年インディペンデンツ設立、代表取締役就任。

秦さんが連載コラムで以前、シードベンチャー企業に対するFS手法として「Convertible Noteの活用」を取り上げました。最近のベンチャーFSにおいては「無保証型CB(Convertible Bond=転換型新株予約権付社債)」の活用事例が増えています。投資家にとってCBはキャピタルゲインが期待できるエクイティ的側面と、元本回収が明確なデッド的側面の両方を兼ね備えています。発行会社にとっては、株主資本的な長期安定な資金調達と、潜在株式ゆえに経営関与度合を抑えられるメリットがあります。ただし、CBはあくまで負債であるため、財務基盤が脆弱なベンチャー企業のFSには向いていません。収益計画がきちっと見通せるミドル・レーターステージの企業向きです。2000年まではCBはよく見られるベンチャー投資手法でしたが、VCのアーリーステージへの株式投資の増加に伴い、結果的にCB投資は減りました。

CB減少のもうひとつの理由は個人保証の問題です。当時は銀行融資と同じように、CBに対しても経営者に債務保証を求めていました。アーリーステージの経営者は個人での債務保証に拒否反応を示し、資本経営分離を求める時代と共にその傾向は強まっています。一方で現在のVCの投資契約書の多くは、発行会社と投資家に加え経営株主(経営者)との三者間契約です。この投資契約の中に買取条項があれば、経営者が個人保証をしているのと実質同じです。監査を受けていない未上場企業の場合、決算や会社内容については経営者に表明保証責任があります。しかし債務保証的な経営者の買戻責任は、エクイティではなくデッド(借入)そのものです。

CBに経営者の債務保証を求める事と、投資契約で経営者に買取保証を求める意味合いは同じです。株式投資に償還期日はありませんが、CBには償還期限と償還金額が明確に定められています。しかし個人保証の無いCBもデッドである以上、経営者に対して緊張感を与え、経営に強い規律を求めます。もうひとつCBの良い点は、発行要項がオープン(登記)になる事でCO-INVESTの検討時間が短縮できる事です。投資契約書は各VCで違うため、その内容の摺り合わせに、発行会社だけでなく後から参加する投資家は大変苦労します。

これからのベンチャー投資に無担保型のCBは有力なFS手法になっていくと思います。東京プロ市場は未上場段階でのCBを株式転換せずに上場ができます。劣後ローンである新株予約権付ローンというスキームもCBに近い資金調達方法です。会社の経営状況に応じて柔軟な投資手法を採用する事で、ベンチャー投資がもっと増加すると期待しています。

【コラム】「Convertible Noteの活用」(秦信行)


※「THE INDEPENDENTS」2013年9月号 - p3より