「「『アイウェア』カンパニーの確立―既存業界でのイノベーション」」
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1969年に『断絶の時代』を著し、その当時の重要産業や中心事業が陳腐化する一方、企業家によって新しい新産業が生れ、世界がグローバル化・多元化し、知識が重要な資本になる時代が来ると主張したのはドラッカーであった。同時にドラッカーは、同書で組織維持のためのマネジメント能力に代って、企業家精神、すなわちイノベーションを生み出すための企業家精神がより重要になる時代が再び到来すると強調した。続いてドラッカーは、1985年に『イノベーションと企業家精神』を書き、より具体的なイノベーションを実現する原理と方法について事例を紹介しながら明らかにした。
ドラッカーはこの2著書において、殊更ベンチャーを取り上げたわけではないが、1950年代から1960年代の米国経済を支配した大企業に代って、既存の中小・中堅企業から生まれる様々なイノベーションを事例として取り上げ、それが1970年代以降の米国の雇用機会を拡大させ、米国経済を成長させると説いた。その動きは今も続いている。
日本でも、既存業界の中小・中堅企業の中から、新しいイノベーションを生み出すことで高成長を実現する企業が過去にも何社か存在した。現状、そうした企業として注目される1社がメガネ業界に登場した(株)ジェイアイエヌである。
ジェイアイエヌのイノベーションは何点かあるが、最大のイノベーションは、メガネを視力矯正のための道具=アイテムではなく、視力矯正の必要性がない人にも服装や状況、シーンに合わせて併用するファッション・アイテムとして再定義し、それを「アイウェア」として提示することで従来のメガネ業界が見過ごしてきた潜在顧客の掘り起こしに成功したことではなかろうか。それは、事業ドメイン自体のイノベーションにほかならない。
その代表例がパソコン利用者向け商品である「JINS PC」であろう。「JINS PC」は視力矯正のためのメガネではない。このメガネは、パソコン利用時に顧客が使用するメガネで、眼精疲労などを抑えるといった効果を持ったメガネではあるが、視力に問題がある人が掛けるメガネではない。正に利用シーンに合わせて開発されたメガネなのだ。
勿論、その他にも従来の業界常識を打ち破り、メガネレンズの集中・大量購買と海外工場からの直接購買による低コスト化と差額レンズ代金なしのオール・イン・ワンプライスや、メガネ作製の時間短縮の実現など、幾つかのイノベーションに成功している。まさにジェイアイエヌの経営理念に謳われている「・・既成概念にとらわれることなくメガネの常識を覆し、全く新しい付加価値を持った商品やサービスを提供して」いるのである。
創業者の田中仁氏は1988年有限会社として当社を立ち上げた時には雑貨を扱う業者としてスタートした。その後、1990年代に韓国での経験を下に、日本のメガネ業界の問題点に気付かされ、新規事業としてメガネ事業に関心を持ったという。
日本の既存業界を見てみると、イノベーションの余地を残す業界はまだ他にも数多くあるのではなかろうか。今後はそうした業界のイノベーションにも期待したい。
【ベンチャーコミュニティを巡って第47回】「IPO大賞に思う」
※「THE INDEPENDENTS」2013年9月号 - p15より