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「売出と公募に見るファイナンスの意義」

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株式会社インディペンデンツ
代表取締役 國本 行彦 氏

1960年東京都豊島区出身。84年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。2006年インディペンデンツ設立、代表取締役就任。

今年前半のIPOは、公募より売出による資金調達金額の方が多かったようです。東証マザーズは成長企業のための市場というイメージ通り、公募調達は売出調達の倍の金額でした。逆に東証1部及び2部は公募より売出が多く成熟企業がIPOしています。意外なのはJASDAQ市場で、売出金額が公募調達を上回っています。

既存株主の資金回収である売出に対し、公募増資は発行企業に直接的に成長資金が入ります。売出だけのIPOは認められない時期もありましたが、最近は企業のIPO位置づけも変わりました。昭和58年に公募増資が認められた店頭市場(現JASDAQ)は、中堅中小企業のための市場として発展しましたが、現在はIPO時に公募増資が義務付けられているマザーズ市場が、成長企業向け市場として認知されています。

ベンチャーキャピタル(VC)は、ベンチャー企業への成長資金提供するため、新株引き受けが中心で既存株主からの株式の買取りは通常行いません。IPO市場においても公募に対して売出が多い企業の成長性は低く評価されがちです。業績に対して自信を持つ経営者はIPO時の株式売出は最低限に抑えます。ただしバイオ企業は公募だけでなく、VCを中心とした売出も多くなっています。

証券市場は発行市場と流通市場から成り立っています。最近注目のクラウドファンディングには流通市場はなく発行市場だけです。グリーンシート市場は新しい株主(ファン)作りのための市場として期待されています。流動性が低い東京プロ市場は発行市場としての役割が求められています。成長資金の提供の場も多様化してきています。

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※「THE INDEPENDENTS」2013年8月号 - p3より