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「法人版エンジェル税制」

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株式会社インディペンデンツ
代表取締役 國本 行彦 氏

1960年東京都豊島区出身。84年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。2006年インディペンデンツ設立、代表取締役就任。

ベンチャー投資において個人投資家(エンジェル)の役割が注目されています。
「高付加価値型ベンチャー企業の簇業(そうぎょう)」が日本ベンチャー学会などから緊急提言されました。現行のエンジェル税制には、投資上限1000万などの制約や煩雑な手続きなどによってあまり活用されていません。その中でエンジェル・ファンドの制度化や法人版エンジェル税制創設が提言されています。

現在のエンジェル税制は個人限定ですが、法人にまで適用を拡大するというのは大賛成です。
提言では大企業のベンチャー投資促進を想定しているようですが、むしろこれは中堅企業にとって大変魅力的だと思います。日本の中堅企業はオーナー型が圧倒的に多く、よい意味で公私混同です。節税意識も高く、リスクの高いベンチャー投資に対しても素早い判断ができます。

東京プロ市場に参加できるのは、特定投資家(プロ投資家)に限定されます。
個人の場合は金融資産3億円以上が参加要件(投資可能)になります。
しかし法人の場合はそのような規則はなく、全ての法人が証券会社毎の判断で投資可能になります。ここでも税制面でのインセンティブがあればベンチャー企業へのリスクマネー増加が期待できます。

株式市場は活況ですが、VCファンドへの年金基金・機関投資家からの資金は細っています。
IPO市場の主役はリスク許容度の高く少額で回転の早い個人投資家です。
エンジェル・ファンドによって小口投資が可能になれば、ベンチャー投資家の裾野も広がるでしょうが流動性は課題として残ります。ベンチャー投資における主役は自らの判断でリスクを取れる中堅企業オーナーが最適ではないでしょうか。

※「THE INDEPENDENTS」2013年4月号 - p3より