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「ビジネスモデルの輸出国家日本へ」

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早稲田大学大学院商学研究科
教授 松田 修一さん

1943年 山口県大島郡出身
1972年 早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了
1973年 監査法人サンワ事務所(現トーマツ)入所・パートナー
ベンチャー企業の倒産回避・成長支援、ベンチャーキャピタルの成長支援に従事
1991年 早稲田大学システム科学研究所(アジア太平洋研究センター)教授
1993年 早稲田大学アントレプレヌール研究会を組織、代表理事(現在)
1997年 日本ベンチャー学会副会長
1998年 エンジェル・ファンドとしてウエルインベストメント(株)設立、取締役(現在)
早稲田大学大学院(MBA:国際経営学専攻)教授
2002年 早稲田大学アジア太平洋研究センター所長 アジア太平洋研究科委員長
2003年 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 国際経営学専攻(専門職大学院:MOT担当)教授
2004年 日本ベンチャー学会会長(現在、理事・制度委員会委員長)
2007年 早稲田大学大学院商学研究科(ビジネス専攻)教授(現在)

松田修一研究室
http://www.f.waseda.jp/matsuda/index.html

*21世紀型の新たな国家戦略に向けて緊急提言
高付加価値型ベンチャー企業の簇業(そうぎょう)を緊急提言した。簇業とは湧きいずるように草木が群生する創業をいう。現在の日本は技術力の高いベンチャーがたくさん出てくるという風土ではない。世界で一番輝いているプラットフォーム企業であるアマゾンやグーグルをベースにしてどれだけのベンチャーが立ち上がったか。ソフトバンクや楽天が産業のインフラになるような企業になるかもしれない。そういうプラットフォーム企業が出てくる国にしないといけない。2030年の人口構造は高齢者層がボリュームゾーンになり、社会保険コストをどう負担していくか。製造業の輸出では間に合わない。日本の強さを活かした会社を成長ゾーンに位置付け、海外で稼いできたものが日本に入ってくる仕組みを作らなくてはならない。それがビジネスモデルを輸出するということ。それができるのがプラットフォーム企業である。

リスクファイナンス導入のための規制改革を
(1)証券市場活性化のための日本版JOBS法の導入
(2)投資ファンド多様化のための日本版エリサ法の導入
(3)成熟社会の個人資金を集めるエンジェル・ファンド組成の制度化
(4)法人版エンジェル税制創設と研究開発型ファンド投資の税額控除の認定
会社というのは資金面において長期にかつ安定的にサポートされなければならない。そのために長期資金が必要。これができるのは年金資金。欧米では年金資金の5%がベンチャーに振り分けられている。日本では1%未満だろう。日本の安定資金をリスクマネーとしてベンチャーへ出す「仕組みづくり」にもっと工夫が必要。
エンジェル税制の対象は技術ベンチャーに限っているが、技術ベンチャーの定義は曖昧。認定を受けるためのドキュメンテーションも煩雑で認可が下りるかどうかもわからない状況。開業5年未満の会社であれば、技術ベンチャー如何を問わずすべてエンジェル税制を認めればよいのではないか。

ブランド・ガイドラインの策定と知的財産庁への組織替えを
クールジャパンを謳って海外に食品などを販売する仕組みづくりを経済産業省が取り組んでいる。日本を世界に売り出すというのが政治家の仕事である。しかし政治家の名刺には日の丸が入っていない。世界に向けての日本のブランドづくりをしていかなくてはならない。ブランド構築のためには特許庁が知財全体をカバーする組織に変えたほうがよい。

5倍の付加価値を生み出すビジネスモデル輸出国に
生産人口の減少が継続し高齢化が進む中、国内が活性化し続けることは難しい。高齢化社会は必然的にハイコスト国家である。日本には素晴らしい経営資源があるがそれを活かしきれていない。日本でビジネスモデルを作って海外で稼いでくる。本籍は日本でも現住所(ビジネス)は海外。国内には技術力を持つ現役が残っているし、それを継承してくべき。国内でエコシステムを作り、そこで構築されたビジネスモデルを海外の最適地の地域・顧客に移転していく。国内の人口構造が変わる中で2%の成長率を維持することはできない。従来の売上モデルを変えてビジネスモデル輸出国家になる。

中小・ベンチャー企業を簇業(そうぎょう)し、新たなビジネスモデルを確立、展開するための自律した地域づくりを
高く強い志を持つ個人がいて、挑戦する中でチームができ、成功も失敗も含めた感動が共有され社会の資産となっていく。その循環の仕組みを日本(地域)はグローバル志向の若者と熟年者で形成していく。高齢化が進むということは、経験や知識が十分であるとも言える。しかしながら、それを実行していくための体力がない。この知を生かしていく仕組みが必要。また、それを以って全力疾走する若者のパワーも必要。これをどうやってバランスし産業に取り込んでいくか。こういう社会ができれば30?50年後に日本は軟着陸ができる。

【特別寄稿】事業計画発表会、次なる100回目を目指して
【特別セッション】世界にはばたくグローバルベンチャー(事業計画発表会100回記念パネルディスカッション)