アイキャッチ

「クラウドファンディングとは」

公開


國學院大学
教授 秦 信行 氏

野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)

 昨年あたりから日本でもクラウドファンディングが注目され始めている。クラウドファンディングのクラウドは、Cloud(雲)ではなくCrowd(大衆)であり、ファンディングはFunding、すなわち資金調達のことを指す。つまりクラウドファンディングとは、大衆各人から小額の資金をネット経由で調達することを意味する。

 日本ではまだなじみが薄いが、既に欧米及び中国・韓国などでは、新興企業の資金調達で活発に利用されているようである(千田雅彦「クラウドファンディングの幕開け?JOBs Act成立の意義とその内容?」『月刊資本市場』2012.7(No.323)参照)。その意義は、ネットを利用することで、よりオープンに幅広く資金調達を行うことにある。

 米国では、2008年にサービスを開始した先発のインディーゴーゴーや後発のキックスターターといったクラウドファンディング・サイト運営会社が既に有名になっており、1件当たり1億円近い資金調達ができる環境が整っている。

 米国でも元々はイベントなどを実施する際の寄付金を集める手段として始まったようだが、最近では創業資金の調達など幅広く利用され始めている。

 そうした状況を背景に、今年4月に米国で成立したJOBS Act(Jumpstart Our Startups Act)にもクラウドファンディング条項が含まれており、従来100万ドル以上の純資産を持つ富裕層から500万ドル以下の資金を調達する場合には、SECへの簡易な手続きで可能であったが、その調達資金金額の上限が10倍の5,000万ドルに引き上げられた。また、個人投資家についても、年収または純資産額が10万ドル超の場合には、年収か純資産の10%以内の投資に限って、また年収または純資産が10万ドル以下の場合は、2,000ドル、または年収か純資産の5%の金額いずれか大きい方の金額までの投資に限って、簡便な手続きでの投資が可能となった。加えて100万ドルまでの少額発行枠でれば、SECへの登録なしで資金募集が可能となった(上掲千田論文参照)。

 米国ではこのJOBS Actの成立により、一般的な中小企業の企業金融の手段として利用が更に拡大していくものと考えられる。

 日本でもネット上でクラウドファンディングを取り扱うサイトが今年に入って増えているようだが、日本の場合、依然資金調達の目的がイベントやキャンペーンなどの寄付になっているものが大半を占めているようだ。

 一方で、クラウドファンディングには詐欺まがいのものも含まれており、そうした不届きものを排除する仕組みも必要となる。とはいえ、そうでなくとも資金調達手段が限られているベンチャー企業にとっては、クラウドファンディングの拡大は朗報と言えよう。逸早い法整備が待たれるところである。

【コラム】クラウド・ファンディングとエクイティ文化(國本行彦)

※「THE INDEPENDENTS」2013年1月号 - p13より