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「成果を上げるための近道 ~業務プロセスを「分解」する~」

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株式会社チェンジマスターズ
代表取締役 法貴 礼子 氏

広島市出身。広島市のベンチャー企業の経営企画室で株式上場準備を4年間担当。経営計画立案や予実管理を実務として行う。その企業は4年間で年商が18倍に成長。2003年に静岡市へ移住。営業職を通じて数多くの中小企業経営者と接する中で、経営計画を立案・活用できていない企業が大半であることを知る。 2005年2月に、企業成長の核となる経営計画立案サポートの専門会社「チェンジマスターズ」を設立。「会社を良くしたい」という熱い想いを形にするお手伝いに全力投球しています。

◆会社概要
本社:静岡市駿河区新川2-5-36 TEL:054-266-7220
設立:2005年2月 資本金:4,000千円
http://www.changemasters.jp/

―成果を上げられない要因
アメリカのロバート・メイジとピーター・パイポが、ビジネスパーソンが求められる行動を取らなかったり、成果を上げられなかったりする要因を研究して、以下のようなとても興味深いデータを示しています。

【成果を上げられない要因】
・仕事の進め方が分からない 30?40%
・目標や役割についての認識不足 30?40%
・能力が足りない 10?20%
・報酬や評価がない 10?20%

多くの経営者やマネジャーが、部下に成果を出させようとスキルアップや評価制度の見直しに目を向けます。しかし、このデータから分かるように、業績を向上させるためには、「仕事の進め方」や「目標や役割についての認識」を明確にし、共有化することの方が効果的なのです。

―業務プロセスを「分解」して考える
「何事も小さな仕事に分けてしまえば、特に難しくない」―マクドナルド創業者のレイ・A・クロック氏の言葉です。マクドナルドが現在のように世界的大企業になっているのは、必要な業務を細かく分解し、特別なスキルのないパートやアルバイトなど誰でもできる仕組みを創り上げているからです。だから、非常に短期間で接客や調理などの業務ができる人材をつくることができるわけです。
営業にも同じことが言えるのではないでしょうか。営業の業務というと、経験や勘などに頼り、どうしても属人的になりがちです。「俺のやっている通りにやってみろ」と言われても、一部のセンスのある人を除いて真似をするのは非常に難しいことです。言われた側は、まさに「仕事の進め方が分からない」という成果を上げられない要因を抱えてしまうことになっていると言えます。OJTの限界はここにあると私は思っています。

―コピーのとり方を分解
エクササイズとして、あなたが社内の複合機でA4用紙を1枚コピーする方法を分解して箇条書きにしてみてください。いくつのプロセスに分解できますか?同じ複合機を使用している社内の方にも同じように分解してみてもらってください。誰もが同じように分解できているでしょうか?
ベテラン同士だったら、3?5個に分解されたものを見れば内容は伝わるでしょうし、同じクオリティで無駄なくコピーがとれるはずです。しかし、初めてその複合機に触れる人には、10個とかそれ以上に細かく分解して説明しなければ、やるべきことが伝わらず、何度もミスをする可能性も高いですよね。良いクオリティを守ろうとすればするほど、行っていることのプロセスを細かく分解する必要があるのではないでしょうか。

―トップセールスパーソン≠トップマネジャー
トップセールスパーソンの多くが、「自分でやればできるが指導育成ができない」という課題を持っています。それは、自らの行動は無意識的に行っているからです。無意識の行動を理解し説明できなければ、スキルの伝承や指導・育成するのは極めて困難です。製造業や伝統工芸の世界などにおける技術の伝承でも同じことが言えます。成功している方法やできる人が行っていることを細かく分解して誰でも分かるようにすることが、人材育成の早道でもあり、成果に一番直結すると思うのです。

―ドラッカーの名言
結果を管理しても、結果が出るわけではありません。結果に至るためには、それに至るまでの然るべきプロセスがあるはずです。結果というのは、プロセスの延長に他なりません。マネジメントとは、結果や人間を管理することを言うのではなく、結果に至るプロセスを管理することだと思います。ゆえに、マネジャーの最も重要な役割は、成果を最大化するための業務プロセスを作ることだと思うのです。かのドラッカーも「企業が経営戦略を実行する上で必要な要素は、『資源』『プロセス』『価値基準』である」と言っています。人材資源やビジョンももちろん大事です。ここにプロセス・仕組みが加わることによって、経営はより強固なものになります。

余談ですが、先日、漆塗りの伝統工芸をしている師匠と弟子にそれぞれ小型カメラや体の動きを読み取る機械を装着して、体の動きの違いを分析する研究についてのテレビ番組を見ました。以前は、手首の使い方の違いが出来の差と思っていたのに、分析してみると、首や肩のブレ幅や、塗る際の視点など、お互い思いもよらない差があることが判明したことで、弟子の上達が急激に速まったという内容でした。行動を分析して科学するということを証明している興味深い事例だと思いませんか?

【起業家インタビュー】訪日観光に特化した旅行会社(株式会社フリープラス 代表取締役 須田健太郎)
【今日から取り組める 簡単な経営のヒント2】企業の「社会貢献」を考える(法貴礼子)

※「THE INDEPENDENTS」2011年7月号 - p34より