「「ベンチャーキャピタリストの雇用システムとVC会社の組織形態」」
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前回のこのコラムでVC投資業務の本質について書かせていただいた。同時に、VC会社が優秀な人材を確保するためには、ベンチャーキャピタリストの経済的処遇やVC会社の組織形態について見直す必要があるのではないかと述べた。今回それらの点について、少し膨らませた議論をしてみたい。日本のVCファンドの運用成績は平均的に見て余り芳しいものではない。1982年日本で初のVCファンドが組成されて以来の各ファンド組成年別のIRR(=内部収益率)をVEC調査で見ると、1998年度以降マイナスとなっており、加重平均TOPIXを下回る年も散見される。
こうした芳しくない運用成績の1つの原因として、ベンチャーキャピタリストの雇用システムや経済的処遇の問題も挙げられるのではなかろうか。
数年前筆者は厚生労働省のあるプロジェクトで日本のVC会社の雇用システム等について調査を行ったことがある(秦信行「日本のベンチャーキャピタル会社の組織形態と雇用システム、雇用管理体制」(日本ベンチャー学会誌『ベンチャーズ・レビュー September 2007』参照)。その調査では比較の意味でヨーロッパのVC会社の調査も行った。
米国と違って株式会社形態のVC会社が多く、人員規模も比較的大きいという意味で日本と似ている欧州のVC会社では、多くの会社においてアナリスト、ジュニア、シニア、パートナーといった形でベンチャーキャピタリストの職能階層が設けられていた。同時にそれぞれの階層で必要なスキル等が明確化されており、プロモーションのための人材評価システムと、それぞれの職能階層毎の成果主義的な報酬体系も綿密に設計・整備されていた。その結果、キャピタリストの目標設定が行い易く、かつキャピタリストに対する経済的インセンティブも機能し易い体制が作られていた。
翻って当時、日本のVC会社で欧州のような雇用システムをもっている組織は少なかった。その後についても、日本のVC会社で雇用制度を大きく変えたという情報は余り聞かない。
米国のVC会社は組織形態からして日本とは大きく異なる。米国VC会社の組織形態の大半はリミテッド・パートナーシップ(LPS)、次いでリミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)、株式会社は極めて少数である。米国のVC会社がこうした組織形態を採用している最大の理由は、組織自体に課税がなされないためと考えられる。そのため組織構成員であるキャピタリストに収益が直結し、それがキャピタリストの経済的インセンティブとなっている。米国のLLCは法人ではあるが、実は法人税は課せられていない。
日本の場合、歴史的に信用力をもった組織形態のバラエティが少なくVC会社の組織形態を株式会社以外に変えるのは難しいのかもしれない。2006年の会社法制定で新しく作られた日本版LLCといえる「合同会社」も法人であるがゆえに日本では法人税が課せられてしまう。とはいえ、VC会社の会社形態についてさらに研究をしてみる必要はあろうし、少なくとも雇用システム、経済的処遇に関しては改善の余地があるように思う。
※「THE INDEPENDENTS」2011年7月号 - p7より