「「米国ベンチャー・ファイナンスの変容」」
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米国のベンチャーキャピタル(VC)投資は、2008年秋のリーマンショックの影響で2009年まで落ち込んだが、昨年2010年は環境関連分野への投資を中心に前年比約20%増と回復に向かっている。日本のVC投資が2007年以降連続して大幅に減少(2009年の投資額水準は直近のピーク2006年の3分の1となった)し、昨2010年も回復の芽がみえない状況となっているのとは異なっている。ただし、米国のVC投資、というよりもう少し幅広くベンチャー・ファイナンスにおいて新しい潮流が見られ始めており、その結果従来のVCの役割や意義が薄れてきているといった指摘がなされ始めている。所謂VC無用論の台頭である。
新しい潮流の1つは、IT関連分野においてベンチャーの創業及び運営資金が小さくて済むようになった結果、通常はVCに比べて小額の資金しか保有していないエンジェル投資家の資金のみでベンチャー育成が十分賄われているという点である。それは米国のエンジェルがネットワークを形成することで情報収集力を強化し、さらにはエンジェル・ファンドを組成することで継続的な投資が可能となることによって加速されているように見える。つまり、エンジェルが従来のVCと同様の情報収集力と投資手法を手にすることを通じて従来のVCの領域を侵食し始めているというのだ。
2つ目の新しい潮流は、小額のベンチャー・ファイナンスが拡大する一方で、電気自動車などのクリーンテックや、フェイスブックなどSNS分野で市場の爆発的な拡大に対応して劇的な成長を実現するベンチャーが出現し、それに対して従来のVC投資とは1桁違った多額の投資、資金提供をするケースが出てきている点である。こうしたグロース投資においては、対応できるVCは一部のトップVCに限られており、さらには投資金額、投資手法の観点からバイアウト・ファンドとの競合も出始めていることである。
どうやら最近の米国でのベンチャー・ファイナンス、VC投資の流れをベンチャー1社当たりの投資金額でみると、少額投資と大型投資という両端の領域で更なる小規模化、更なる大規模化が進行する一方で、多くの従来型のVCが得意とする、その中間の領域の投資ニーズはむしろ減少気味であるようだ。加えて、2000年のネットバブルの崩壊でフローの投資は大幅に減少したもの、ストックであるVCのファンドの運用管理金額は1990年代前半の10倍近くを依然維持しており、資金過剰の様相を呈している。要は現状米国VCの資金需給バランスは資金過多に傾いており、それが競争の激化を通じてVCファンドの運用パフォーマンスを悪化させているともいえるようにも思う。
では、本当に今後このまま従来型のVCの役割は消えていくのであろうか。筆者にも結論を出すのは難しい。ただ、その答えは、今後革新的な事業開発がどのような形で行われていくか、つまりベンチャー輩出のあり方にかかっていることは間違いない。