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「地震は中国でも関心事・・・」

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ヴェリタスアカウンティングファーム
代表 林 高史 氏

1990年名古屋大学経済学部卒業後、あずさ監査法人、ジャフコ(ジャフココンサルティング)を経て、2005年林公認会計士事務所開設。同年北京大学へ留学。08年大連市に事務所開設、ヴェリタスアカウンティングファームに統合。

【ヴェリタスアカウンティングファーム】 http://veritas-af.com/

皆様こんにちは、林です。日本も寒の戻りで少し冷え込んでいますが、大連の風は強くそして冷たく、春はまだまだ先のほうです。

さて、日本は大地震が起きて被害に遭われた方々には、本当に心よりお見舞い申し上げる次第です。中国大連でも大連日本商工会では募金活動が始まっておりますし、大連人民政府対外貿易経済局からも公式に慰問状が出されるなど、現地中国人も日本の現在の状況については心を痛めているようです。中国でも2008年の四川大地震では死者7万人、1976年の唐山地震(天津)ではなんと死者24万人を数える大きな被害を出しており、地震は隣国中国でも自然災害の中で無視できない関心事です。

ちょうど今回の日本の大地震が発生した直後、中国では全国人民代表大会が閉幕し、温家宝氏が当該大会で決定された経済政策等、向こう5年間の中国の経済状況についてコメントを発表しているところでした。通常であれば全てのチャンネルがこの温家宝氏の演説を放映するはずなのですが、今回は一部のチャンネルで日本の大地震ニュースを断続的に放映しており、日本で起きた大災害に対する関心の高さを実感しました。(ちなみに、温家宝氏の演説ははっきりとした、そしてゆっくりとした中国語であり、中国語初心者でも概ね聞き取ることが出来ますのでヒヤリングの訓練にはもってこいです)

建物の地震対策について、大連市政府関連の方にお話を伺ったところ、2000年以降、いわゆるレンガを積み上げて壁を塗っただけの建物(以前は狭い路地(胡同といいます)などにたくさんありました)は早期に取り壊し、耐震構造のものに建て直すよう急ピッチで進めていることや、高層マンション等では欧米および日本からの耐震技術を取り入れて震度7程度の地震に耐えられることを基準としているとのことです。大連市内でもこの基準に満たない建築物が使用禁止や販売禁止になっているケースがあり、大国中国の人命に対する意識レベルも徐々に高まってきているのではないかと思います。

今回中国から帰国する間際に、中国人の知人から「日本は放射能で完全に汚染されていてとても危ないから帰らないほうがいい。日本人もたくさん日本から出国して中国に来ているよ。」と真顔で忠告されました。確かに中国国内で報道されている内容は表現もきつく、かなり誇張されてものも多くて誤解を生みやすいものでした。これには、在日中国人に中国への帰国を促す一方、日本政府の発表する災害情報が二転三転することに対する風刺の意図も含まれているのかもしれません。

※「THE INDEPENDENTS」2011年4月号 - p15より