「「アントレ教育に思う」」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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アントレプレナー教育=起業家教育に注目が集まっている。実際、小・中・高・大、さらには大学院レベルでも、何らかの形でのアントレ教育プログラムが数多く実践されている。経済産業省も、1999年度に起業家精神涵養(かんよう)教材等開発事業や起業家教育交流促進事業という形で起業家教育をスタートさせ、2002年度から2006年度にかけては、起業家教育促進事業に形を換え様々な実践プログラムを後押しした。狙いは、将来の新規事業の創造・創出の担い手となる「起業家マインド」を持った若者の育成・輩出を図ることにあった。ただ、残念ながらその事業は今は打ち切られている。
起業家教育が叫ばれる背景には、日本での起業家輩出の少なさがある。ちなみに、毎年各国の起業家活動に関するデータを出しているGlobal Entrepreneurship Monitorで18歳から64歳人口に占める起業準備中ないしは起業後3年半以内の人の割合TEA(Total Entrepreneurial Activity)を見ると、日本は2009年で調査対象54カ国中最下位、過去を見ても下位に留まる。 この状況を変えるために起業家教育が叫ばれているのだが、残念ならが今までの所、その効果は余り出ていないようだ。
起業家教育の内容に関して日本だけでなく各国で行われている事例を見ると、起業家教育は、「チャレンジ精神」「リーダーシップ」といった起業家に必要な内的精神を養うための「マインドセット」教育と、財務や人事、マーケティングといった「スキルセット」教育の2つに分けることができるようだ。そしてこの2つの教育の内、「マインドセット」教育は小・中・高の時期、つまり子供時代に重要であり、起業に必要な「スキルセット」教育は大学、大学院において重要と考えられている。「マインドセット」教育と「スキルセット」教育の2つが揃うことが重要だが、特に「マインドセット」教育はより重要だと思われる。例えば、子供時代にマインドセットが充分教育されていない人間に大人になってスキルセットを教育しても、それが現実の起業家を生み出すことに繋がることは少ないのではないか。経済産業省の「大学・大学院起業家教育講座データベース」を見ると、各大学・大学院で起業家のための「スキルセット」教育はかなり広まっている。しかし、現実の日本での起業家の輩出状況は依然として芳しくない。教育の効果は長期的にみる必要があるが、日本ではそもそも子供たちの「マインドセット」が整っていないのではないか。日本でも確かに子供たちへの「マインドセット」教育が、2000年前後から盛んに行われている。その多くは、バザーや学園祭などで商品を企画させて販売するといった体験型のプログラムになっている。その効果を疑う訳ではないが、そうした形の起業家教育だけでは日本の若年層のマインドを起業家的にすることは多分難しい。
起業家に必要なマインドセット、それは何も起業家に必要なだけではなく社会で自立して生きて行くためにも必要なものといえる。通常の小・中・高の授業において、もっと起業家のマインドセットを意識した教育が行われる必要があるように思う。
※「THE INDEPENDENTS」2010年12月号より