アイキャッチ

「「お金を集める施策に投資する」」

公開


ピーシーネット株式会社
代表取締役 遠藤 啓慈 氏

64年福島県いわき市生まれ。87年信州大学経済学部卒業後、富士銀行系システム子会社、アルパイン(株)経営企画室を経て97年ピーシーネット(株)を設立、代表取締役就任。VCから投資先のECサイトに関する相談を受け、アドバイスをしている内にこのコラムのネタを思いつく。9月号より集中連載スタート。

◆会社概要
本社:東京都港区浜松町1-30-5 浜松町スクエアStudio 1407 TEL:03-5468-7478
設立:1997年8月 資本金:18,000千円
http://www.pcnet.jp/

? グーグル会長のことばの意味
グーグル会長のエリック・シュミット氏は、2009年10月19日号の日経ビジネスで、以下のようなことを言っています。「グーグルが検索や広告市場を支配するとか言われるが、人々は、この業界の競争の激しさを忘れているのではないだろうか。ユーザーはただ"ワンクリック"するだけで、簡単に検索サイトを変えられるのだから。」 ネットビジネスに関わる人にとって、これは深い言葉です。「ただ"ワンクリック"するだけで変えられるのだから。」

? 売上の激増、激減
シンプルな例で、この言葉の意味を証明します。私の知っているあるネットショップは、最高月商1億円、年商10億円まで伸ばしました。年商10億というのは、年間購入金額1万円のお客さまが10万人いることになります。メールマガジン会員だけでも10万アドレスを軽く超えます。それほどの会員がいれば、安定した売上が見込めると考えがちですが、そのお店は月商1千万円まで一気に売上を落としてしまいました。リアルの店舗であれば、いくらなんでも一気に10分の1に売上が減るということはありません。しかしネットでは起こり得ることなのです。

? リアルとネットの感覚の違い
花畑牧場は2008年の楽天ランキングスイーツ部門1位でした。しかし、今はどうでしょう。あれほどの商品点数では、ネットの世界でトップの座を守るのは難しいものがあります。なぜならネットユーザーは物理的制約を受けないからです。物理的制約を受けないということは、リアルでは考えられないほどのお店と気軽にお付き合いができるということです。ただ「ワンクリック」するだけで、すぐに違う世界に行けるのです。同社クラスですと40万を越すメールマガジン会員がいると言われていますが、それがそのまま顧客であるわけではありません。もっと極端なことを言えば、固定客などいないのです。ネットビジネスをしている人は、日々このような状況に直面しているので、リアルの商売をしている人と根本的に顧客に対する感覚が違います。

? 顧客数をお金に変える
では、ネットにおける顧客数は、絶対的な意味を持たないのでしょうか。そうではないというのが私の意見です。例えば、40万人の顧客に他社の広告メールの配信ができるのであれば、顧客数が多い方が儲かります。花畑牧場で購入したお客さまに広告メールを送りたい業者は大勢いると思われます。そういう点で、最近よくテレビでみる無料携帯サイトのグリーのCMは、いいお金の使い方だなと感じます。仮にCMでひとりのお客さまを獲得するのに1万円かかったとしても、1回5円のメールかバナーを200回見せれば、元は取れるのですから。

? お客を獲得する為にお金を使う
ネットビジネスでは、最新のシステムに投資するのではなく、お客を集める施策に投資するのが定石です。そして集めたお客で儲けるのです。集めたお客に直接物を売るのではなく、彼ら・彼女らにアプローチしたい業者から収益を得るのです。グーグルも楽天もヤフーもみんなそうです。アマゾンも根本的にはそうです。多くのネットビジネスは、売るためにお客を集めているので、それ以降の広がりがありません。ネットビジネスで成功している企業は、お客を集めることにフォーカスしています。この点をおさえているだけでも、お金の使い方が正しいか正しくないか判断できるでしょう。