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「IPO市場の不振の原因 共感をよびこむことができないIPO市場」

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ソーシャルインパクト・リサーチ
代表 熊沢 拓 氏

慶応大学院(KBS)卒。ベンチャーキャピタル畑が長いが、現在は、ソーシャルメディアポリシー、コーズマーケティング、社会起業支援などに注力。ソーシャルインパクトを最大化する手法を研究中。

【blog】 http://secondarymarketplace.blogspot.com/
【Twitter】 http://twitter.com/kumataku1

今年IPO市場も低調だ。IPOの数もそうだが、質的にも魅力的な会社が少ない。数少ないIPOの中から粉飾会社がでる始末・・・。VCは 海外IPOに活路を見いだそうとしているが、おそらく徒労に終わるだろう。

いろいろな原因はあるが、一番大きいのは、キャピタルゲイン目的での「IPOモデル」では、社会に共感をよぶことができなくなったことである。IPOを目指して会社を興す。ストックオプションで採用した従業員ががんばる。そして、結局はIPOで儲かるのはオーナーだけ。上場後に株を購入した投資家は損をする。

このドラマの結末では投資家としては、1回は許せても何度も許すわけにはいかない。

ソーシャルな時代には社会に共感をよぶことができるかが大きなファクターとなる。共感は利己的な行動ではなく、利他的な行動やより大きな大義(Cause)からよびおこされる。そのような共感ファクターをどこかに入れないとIPO市場が復活することはないだろう。

IPO市場という市場があっても、売り手と買い手が取引をしなければ市場は成立しないも同然だ。その会社の株を買いたいと思う人の存在、それは買いたいと思う気持ち、つまり共感がそこになければ流動性は担保されないのだ。

そういう意味では、私はソーシャルベンチャーに注目している。ソーシャルベンチャーをみると、市場取引でないものに組織は大きく依存しているのかがわかる。組織を支える社員とともに、ボランティアやインターン、お金の面でも寄付が組織を支えている。そのもとにあるのは、その組織が目指しているビジョンやミッションへの共感なのだ。

市場取引できない共感を呼び込むことこそが企業が市場競争で勝つための決定的要因になりうることを逆に示唆しているのだ。市場取引で獲得できるものは自社のみならず他社も同じ条件で入手できるので競争優位にはならないのだ。Web2.0で勝ち抜いた企業は他社よりも早くこの事実に気づいた企業である。例えば、クックパッドは無償でレシピを投稿する人たちに支えられて
いる。YouTubeしかり、ニコニコ動画を運営するドワンゴ、また、アマゾンも書評を無償で投稿してくれる人たちが支えているのだ。

これらは、その組織の目指すビジョンやミッション、その組織のあり方への共感を抜きにしては語れない。