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「特別セミナー「ベンチャーキャピタル活用法」」

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【モデレーター】
勝屋 久 氏(プロフェッショナルコネクター)
【パネラー】
仮屋薗 聡一 氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー)
今野 穣 氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル)
深田 浩嗣 氏(ゆめみ 代表取締役)
藤田 健治 氏(ビープラッツ 代表取締役)

國本:本日はIBMから独立されたばかりの勝屋さんのプロデュースで特別セミナー「ベンチャーキャピタル活用法」を開催いたします。よろしくお願いします。

勝屋:僕はIBMのVC部門にて12年間で 5000名のベンチャー経営者と800名のVCおよびベンチャー関係者にお会いしてきました。僕の原点は「人と人とのつながり」です。世間のVCに対する評価は様々ですが、本日はこれからのVC活用法について、ベンチャー経営者側の視点を交えながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。まずは自己紹介、そしてそれぞれの出会いについて教えてください。

深田:私は学生時代に京都で起業し、モバイルインターネット領域で事業展開しています。仮屋薗さんにお会いしたのは、赤浦さん(独立系VC)の紹介です。当時、資金需要はなかったのですが、ワークスアプリケーションズのビジネスモデルについて教えていただきました。
仮屋薗:いい経営者だと思ったら長期的に付き合います。あとはタイミングです。

藤田:社名の「bplats」は、ビジネスのプラットフォームという意味です。事業はクラウド商社です。三井物産に14年勤め、そこでPKGソフト販売の社内ベンチャーを立ち上げました。使った分だけ課金されるクラウドの時代に、新しいビジネスチャンスを見出し、2006年に起業しました。

今野:グロービスキャピタルパートナーズ(GCP)は1996年からスタートした運用総額385億円の独立系VCです。ワークスアプリケーションズ、ネットエイジ(現ngi)のIPOにより1号ファンドのリターンは8倍でした。1999年に欧米の老舗VCと提携したことで海外の出資者が8割と高くなりました。投資先はIT系が多くグリーなどが代表的です。大企業ではなくベンチャー企業に関わりたくコンサル会社から2006年に転職しました。藤田さんや経営メンバーの方とはその時代からお付き合いがありました。

勝屋:VCから見た投資決定のポイントについて教えて下さい。

仮屋薗:投資を考える上で大事な要件が2つあると思っています。1つ目は市場です。どういう市場をターゲットに、どのようなビジネスモデルで展開していくか、です。市場自体の成長性とそこにアプローチする企業の強みが何かを見ます。「ゆめみ」に関しては、学生時代から起業して10年、モバイル市場でBtoB、BtoC両方を展開してきた経験の蓄積に、非常に高い可能性があると判断しました。
2つ目は経営の質です。経営陣がその分野に対するコミットメント(責務)はどれくらいか、経営チームとしてテクノロジー、財務、マーケティングなどのレベルです。経営は1人で担うものではなく、チームで行うものだと思っています。そのバランスも重要です。

勝屋:起業家の方にお伺いします。VCから出資を受けた背景は何ですか?どのような資金ニーズがあったのですか?

深田:第1ラウンドと第2ラウンドは意味合いが違います。第1Rは新しいパートナー企業を探すための緊急的なFSでした。第2Rは自分がステップアップするため、良い意味でプレッシャーをかけてくれるパートナーとして、VCを選びました。自分たちの経営に欠けている部分を補ってくれる人、経営にコミットしてくれる人。ですから担当者が誰かにこだわり、仮屋薗さんを指名しました。

藤田:第1Rは事業の立ち上げ資金でした。当時はいろいろ手掛けていましたが、VCには人生を賭けてこの事業を立ち上げたい、という想いを伝えました。
今野:この経営チームには、売上ゼロにリセットしてでもこれ一本でやろうという覚悟がありました。この人たちで出来なかったら、クラウド商社は立ち上がらないだろうな、と思いました。
藤田:2008年の増資資金でシステムを開発し、途中でプラットフォーム型サービスに転換し、今年の4月に本格的なサービスが開始できました。

勝屋:VCの支援内容について教えてください。有り難い事だけなく厄介な事はありませんか?

深田:業界情報に詳しく事業支援に強い方、経営の仕組みづくりに強い方、と当社に関与しているVCのバランスも取れ、とても恵まれていると思います。
仮屋薗:私は役員会と月1回の経営会議にそれぞれ出席しています。他の投資先も同様です。ただ、ゆめみの場合は報酬委員会や合宿にも参加します。
深田:報酬委員会は有り難くもあり厄介でもあります。当社は大学同級生3人で創業しました。外部の客観的評価で決めるので役員報酬決定が楽になる一方、言い訳できない部分があります。
仮屋薗:私たちは経営者が自分を客観視できる機会を提供しています。ベンチャー企業の場合は経営者が事業部門長も兼務しているので、MBO(目標管理制度)によって責任の明確化とモチベーション維持向上に努めています。

藤田:前職時代とは違い、今は株主も含め、みんなが同じゴールに向かっているので厳しい意見も好意的に受け止めています。グロービスから紹介された照沼さん(日本ベンチャーキャピタル)もコンサル業界出身で、今野さんと社外取締役のお二人はプロフェッショナルとしてこの分野に対する理解も深く、かつ補完してくれるスキルがありました。コミュニケーションの機会を増やす事で、素早い判断や適切なアドバイスを得られるようになりました。

勝屋:それでは、ここで会場から質問を受けたいと思いますが、いかがですか!

質問:地方企業の発掘・支援においてどのような努力をしていますか?
今野:東京・地方にはこだわっていない。最近でも浜松発祥企業に出資しました。
仮屋薗:一昨年くらいまでは東京に集中していたが、直近は地方の企業が増えています。地方ベンチャーの良い所は従業員のロイヤリティが高く真面目である事です。東京との人件費格差も事実としてあります。今後も地方企業を開拓していきたいと思います。

質問:日本のベンチャー投資の現状問題点と今後の見通しを教えて下さい。
仮屋薗:シリコンバレーでは、ネットバブル後10年で半分くらいのサイズになってきているが、それでも1回あたりの投資金額は10億円前後とあまり変わっていません。最近では2?3億円投資するスーパーエンジェルも現れています。日本では数千万円の投資を数社で行い2億円投資するスタイル。日本のベンチャー投資では、数億円から10億円の部分がもっと増えてもいいと思います。世界へ展開するために、20?30億円必要な企業に対するファイナンスが日本には皆無です。海外からの資金も導入して、全体としての投資額を増やす事が大切だと感じます。
今野:世界から見ると日本のVCは魅力のない金融商品というのが現状です。ベンチャー企業やイノベーションに資金供給するファンクションを失くさないためにも、是非踏ん張りたいと思います。

勝屋:それでは最後に、起業家や支援者に対してのアドバイスを教えて下さい!

藤田:大企業でも大きな投資ができない時代だからこそ、VCの必要性が高まっています。ぜひ、いろいろなVCや経営者とネットワークして、大きく事業を展開してほしい。
深田:(支援者に対して)信頼関係が大事で、結局人と人とのつながりでしかない。想いを共有できる人と一緒にやっていきたい。本気で関わっている人のアドバイスは厳しい事でも聞けます。
今野:社会的要請のある事業を起業の原点にして、これに取り組んで欲しい。そうすれば人も資金も集まります。
仮屋薗:経営者の視界・視点の高さ・事業についての理解・人に対する理解で経営は大きく変わります。経営者には、従業員、取引先に対する責任があるので、どんどん自分を磨き多面的に自分を高めて欲しいと思います。

勝屋:支援者に対してはどうですか?
仮屋薗:最近、支援者側が極端に減ってきています。ベンチャー支援が好きな人同士が、会社の垣根を越えてつながりあって、皆でベンチャーを応援できたらばと思います。

國本:皆様、ありがとうございました。

〜2010年10月29日 特別セミナー「ベンチャーキャピタル活用法」より〜

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