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「大連便りーその1」

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ヴェリタスアカウンティングファーム
代表 林 高史 氏

1990年名古屋大学経済学部卒業後、あずさ監査法人、ジャフコ(ジャフココンサルティング)を経て、2005年林公認会計士事務所開設。同年北京大学へ留学。08年大連市に事務所開設、ヴェリタスアカウンティングファームに統合。

【ヴェリタスアカウンティングファーム】 http://veritas-af.com/

みなさん、はじめまして。日本国公認会計士の林 高史と申します。
現在、大連でこの原稿を書いております。 この「大連だより」を連載することになりましたのは、新聞紙上で中国関連の記事がない日は無いほど中国への関心が高まっている中、「一体全体どんな状況なの?」「日系中小企業で成功している会社はあるの?」など疑問点が多すぎて、関心はあるもののなかなか一歩を踏み出せないでいるとの声をお聞きすることが増え、それではそういった疑問の解決の一助になればという理由で筆を執らせていただいた次第です。

小生は大学卒業後、監査法人および大手ベンチャーキャピタルでの勤務を経て、5年前に独立開業いたしました。現在は名古屋市にて公認会計士事務所を経営する傍ら、主に中国大連へ進出する日本企業へのサポート業務を行っておりまして、小さいながら大連市にも事務所がございます。「なぜ大連なのか?」というご質問をいただきますが、これは最初にご支援したお客様が大連に進出ということだった為でして、事務所設立当時はそれほど深く考えていませんでした。しかし今ではこの地でよかったのではないかと思っております。その理由はまた後ほどの連載の中でご説明いたします。

大連市の概況を紹介しますね。
大連市は、中国東北地区、遼東半島の南端に位置しており、日本の仙台とほぼ緯度が同じです。大陸性気候ですが緯度が高いため冬は非常に寒く、夏は比較的過ごしやすい気候です。日本からは飛行機で2?3時間程度ですし、また東京、大阪、名古屋、福岡からは毎日フライトがあって渡航には便利な環境です。

大連市の人口は約620万人、およそ95%が漢民族です。歴史的には、日清戦争後ロシアおよび日本が当地区を租借していたことから、当時に建造された建物、鉄道等が未だに大連市内に残されており、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。大連市内から西へ車で1時間ほどのところに日露戦争の激戦地である旅順があり203高地は自由に見学できます。とはいっても現在203高地には若干のモニュメントが残されているだけで何も無いところですが.....

大連の産業は、漁業、水産加工業、造船、重軽工業が従来から盛んであり、最近では情報産業等が伸びてきております。大連港はアジア有数の不凍港であり中国の国際貿易港として重要な役割を果たしています(貨物取扱量は全国で7位)。

中国の中にあっては、大連は地方中核都市といった位置づけですが、港町でもあり、所属する遼寧省が政治的にもかなり力を持った地区ですので、人口の割には経済的に発展しているといっていいでしょう。

以上がざっと大連市の紹介です。概況を少しご理解いただけましたでしょうか?

さて、トピックネタとして、最近不動産価格抑制のために中国政府が2戸目以降の取得に関して借入金上限を抑える等の政策を実施していますが、地方都市である大連でも不動産価格の上昇には驚きます。この不動産バブルのような価格の上昇は、大連市内だけでなく、まだ開発が進んでいない北部の瓦房店市、普蘭店市、営口市の不動産まで影響しており、瓦房店市の渤海湾に面する海岸沿いの開発区(大連市内から車で2時間程度)では、まだ開発計画の段階であるにも係らず、マンション1?の価格がなんと3?4,000元(日本円で約42,000円/??56,000円/?、1元≒14円)で販売されているのです。建物が完成した段階では既にこれの2?3倍に取引価格が高騰するとのこと、日本では信じられない状況ですね。購買層は、香港、台湾、韓国資本が中心で一部日本の個人投資家の方も買われているようです。

一方大連市内ではどうかと申しますと、中心部特に人気の海岸地区のマンションでは、1?15,000元?25,000元(日本円で約210,000円/??350,000円/?)で取引されて、中には1?50,000元といったところもあります。日本の水準と比べても遜色ない水準ですね。中国のマンションは基本的にスケルトン渡しでして、内装は購入後自分で行うことになっております。そのコストを加算しますと日本のマンションと比較して・・・・ やはりバブルなのかも知れません。ただ、東北3省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)では最も南に位置する都市である大連市は別荘地としても人気が有り、海岸沿いの高級マンションはそのほとんどが大連市内住在の人以外の人(外地人といいます)によって所有されているとも言われています。

昨日、東洋一の広さを誇る海岸沿いの星海広場に行ってみました。付近のマンションはほぼ完売状態なのですが、夜になっても明かりがともらない部屋が多数あり、投機的に購入された部屋が多く存在することを改めて実感しました。中には、完成しているのに建築基準を満たさないため販売に至らないゴーストマンション(優に1000戸は超えるでしょう)もあり、一体こんな大きなマンションをどう処分するのか、私が考えることではないでしょうが、乱雑な開発もかなり目立ってきました。

不動産価格がどう推移するのかは、多くの資産家が不動産投資をしていることからこれからの経済動向に大きく影響するのではないかと思っております。

逐次、大連から最新の中国情報を発信して参りますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。

※「THE INDEPENDENTS」2010年9月号 - p18-19より