アイキャッチ

「経験」

公開


エルゴブレインズ(現スパイア)
ファウンダー 井筒 雅博 氏

1959年京都生、やぎ座B型、立命館大学卒、西武百貨店、第一企画を経て独立創業。現在は若手映画人を育てる「シネアンビシャス」プロジェクトを推進中。現在、株式会社アルゴノーツ 代表取締役CEO。

【株式会社アルゴノーツ】 http://www.a-notes.net/

起業に適齢期があると思われますか?

もしあるとすればそれは何歳位でしょう?

これもまたよく聞かれる質問です。
人によって適齢期は違うでしょうし、なにをするかによっても違ってきます。
だから正解は無い、というのが正解かもしれません。

ひとつだけ言えることは、若さはパワーだが、経験はそれを凌ぐ底力をビジネスに与えてくれるということです。私で言えば、流通業での販売最前線、プロダクション・中規模代理店・大手代理店で培った実践マーケティングノウハウ、そしてその間の社会経験・組織経験がエルゴ・ブレインズを上場にまで導いてくれたと確信しています。

何事も経験、と言いますが、やはり何も考えずに経験だけを積んでいても「馬齢を重ねる」ことになってしまいます。人生は一度きりで与えられた資源は有限です。有限な資源の最たるものが時間です。同じ経験を積むのであれば自己目標を明確にし、それに向けて一直線に経験を積む必要があります。そして短所を直すよりも、長所を伸ばすことに重点を置くのも肝要です。

自己目標とは、と言えば、あらゆる成功教科書に書いてある通りの答え、つまり「10年後の自分を明確にイメージする」としか答えようがありません。できるだけ具体的に「10年後の成功した自分」をイメージし、それに向けてすべての資源と努力を集中して効率的に経験を重ねていくことしか成功する方法は無い、ということでしょうか。

創業してから上場するまでも、確かに本当にいろいろなことを経験しましたが、それらはすべて本当に楽しい、夢の中のできごとのように思えます。むしろ上場後何年か経ってからつい1年前まで続いた、敵対的M&A・ホワイトナイトの登場・時価総額基準での上場廃止危機・それを防ぐべくMBOを画策、といった本当に長くて苦しい経験の方が、今となっては「いい経験」をさせていただいた、と強く記憶に残っています。

エルゴ・ブレインズとして上場した会社も、合併してスパイアという会社なりました。

一株主としてひたすらに健闘を祈るのみです。

今は、企業が安心して映画に関われる環境作りと、新人監督にデビューの機会を創造するというビジネスに専念しています。私が今まで深々と味わってきた数多の経験が、この新しいビジネスに生きることを心から祈っている今日この頃です。

※「THE INDEPENDENTS」2010年8月号 - p13 より