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「想い」

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エルゴブレインズ(現スパイア)
ファウンダー 井筒 雅博 氏

1959年京都生、やぎ座B型、立命館大学卒、西武百貨店、第一企画を経て独立創業。現在は若手映画人を育てる「シネアンビシャス」プロジェクトを推進中。現在、株式会社アルゴノーツ 代表取締役CEO。

【株式会社アルゴノーツ】 http://www.a-notes.net/

想い続ければきっと願いはかなう。よく耳にする普通の言葉が、最近とても重い言葉に感じられます。よく、なぜ起業したのか、上場まで行けた秘訣は、と聞かれます。いろいろな答えがあります。どれかひとつ、と言われたら、「想い続けること」と答えます。

信念、というほどの強いものではなく、もっと素朴な想い。ずっとその想いを持ち続け、その想いを実現するために努力を集中し、自分を磨き続ける、そしてその想いを言葉に出して人に伝える。そうすると、想いがいつの間にか実体を持ち始めるのだと思います。

私の場合、一つ目の想いは、とても単純でした。小学校のころから「いつかは自分の力で勝負をしたい」と想っていました。なぜそう思ったのかはわかりません。ただ、いつか自分の力で勝負してやる、と想っていました。そして、この想いが40歳を前にして独立起業に踏み切れた最大の原動力でした。

二つ目の想いは、「何かを創り出したい」という想いでした。中学のころから、映画やクラシック音楽、小説等にのめりこみ、ハリウッドの脚本家に憧れたり、作家になろうと文学賞に応募したり。いかんせん才能の無さはいかんともしがたく、少し針路を変え、創り出す世界に入ろうと想い、編集者やコピーライターを目指して就職活動を行いました。そして、数度の転職を経つつも、サラリーマン時代はずっとプランニングの仕事に従事しました。

余談ですが、転職の是非、をよく問われます。私は、「転社」ならいいのでは、と答えることにしています。履歴書の職歴欄に一本筋が通っている、職種が同じ系統で会社の規模、仕事の規模が大きくなっている、という感じ。きちんと目標を持って自分磨きの旅を続けているような、そんな履歴書はとても雄弁に語りかけてくれると思っています。

閑話休題。

最初に入った西武百貨店では、物を売るという原点の熱気と企画のイロハ、萌芽期のデータベースマーケティングを体感しました。広告の世界に転じ、コンセプトメーキングや、売るための仕組み作りを実践で叩き込まれました。最後に奉職していた第一企画(現ADK)時代に、インターネットの荒波が押し寄せてきました。データベースとネットメディア、特にEメールを連動させるととても効率のいい媒体ができるという考えに取りつかれ、年齢ももうすぐ40歳というところに来ていて、独立するには体力気力的にギリギリかという感もあり、積年の勝負への想いを果たすべく会社を辞め独立し、エルゴ・ブレインズという会社を立ち上げました。

幸いにして一つ目の「勝負をかける」という想いは、ゼロから作った会社を上場まで持って行けたということで、現実のものにできたかと思っています。

二つ目の「創り上げる」という想いは、ビジネスモデル・会社を創りだす、という比喩的な形では成功したと言えますが、まだ不完全燃焼の部分があり、今、新しい挑戦である、若手映画人に実戦の機会を与えるための「シネアンビシャス」プロジェクトでより深く実感したいと願っているところです。

※「THE INDEPENDENTS」2010年7月号 - p9より