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「ニッチ企業の経営戦略」

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ライフィクス株式会社
代表取締役 金澤 光洋さん

昭和50年 岐阜県生まれ。平成06年 岐阜県立岐阜高等学校卒業。平成13年 東京理科大学物理額研究科卒業(修士)。平成13年 株式会社日立製作所入社。平成13年 米国Myriad Proteomics社へ出向。平成15年 米国Myriad Proteomics社での出向終了。平成16年 筑波大学数理物質科学科入学(博士)。平成16年 株式会社メディカル・プロテオスコープ入社。平成18年 ライフィクス株式会社設立、代表取締役就任。平成20年 筑波大学数理物質科学科卒業。

住所:東京都港区西新橋1-6-12 アイオス虎ノ門 10階
TEL:03-6268-8995 設立:2006年5月10日  資本金:27,650,000円
http://www.reifycs.com/

―事業コンセプトを教えて下さい
金澤:バイオテクノロジーやライフサイエンスの研究開発に使われる質量分析装置におけるITシステムの開発です。現在のコアビジネスはバイオインフォマティクス(生物情報科学)分野のソフトウェアパッケージ(PKG)の開発販売です。将来はソフトウェアだけでなく、コンピュータハードウェアおよび分析装置まで含めたシステムとして提供していきたいと思います。ITソリューションを核に、研究開発の支援企業として、ライフサイエンスの発展に貢献していくのが私たちのビジョンです。

―事業ターゲットである質量分析市場について教えて下さい
金澤:質量分析は田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞され注目が集まった技術で、今ではライフサイエンスの研究開発に必要不可欠な分析装置です。既にアメリカだけでも数十億ドルの市場であると言われており、今なお成長している市場です。弊社はこの質量分析装置から得られる分析データをバイオインフォマティクスと呼ばれる情報解析技術によって、コンピュータで解析するソフトウェアを提供します。

―競合先はどこですか
金澤:現段階では競合はないと考えています。あえてあげるとすれば、自社のハード専用ソフトウェアを提供している質量分析装置会社(ハードメーカー)かもしれません。ですが互いに分析装置とソフトウェアを販売できるよう営業活動において協業しているため、やはり競合とは呼べない状況です。私どもは唯一、どのハードにも適合する3rdパーティー(独立系)ソフトウェア会社であり、私どもの商品である「SignpostMS(サインポスト)」は、分子の検出量の違いを高速に解析できるソフトウェアです。独自のアルゴリズム計算方式と多変量解析技術により、従来の数時間に対して数分でデータ解析できます。

―東レと最近アライアンス(提携)されました
金澤:今年4月に医薬品における代謝物解析ソフトの共同開発に合意しました。医薬品が体内で変化して作られる物質を代謝物と呼び、それらの一部が副作用の原因になる可能性があります。この代謝物を質量分析装置で分析し、それをデータ解析していきますが、分析装置から得られる膨大なデータを目視で解析するだけでは本来得るべき必要な情報を見落としてしまいます。この代謝物の解析をより効果的に行い薬剤の安全性の見極めができるソフトウェアを東レと共同開発し年内に製品販売を開始する予定です。

―ユーザーのベネフィットは何でしょうか?
金澤:新薬開発のコスト削減です。医薬品開発の上流段階で導入することで、早期に安全性の見極めができ、薬剤開発のコスト削減とスピードアップ、そして開発の成功確率を高めます。

―医薬品業界以外にユーザーはいますか?
金澤:国内の製薬会社の研究機関が主要顧客ですが、最近は食品会社や化粧品会社にも広がっています。質量分析によって、複数の分析試料の違いを発見可能なソフトウェアであるため、例えば食品では味覚や香りの違いなどを探すなど、質量分析を用いる幅広い分野に展開が可能です。

―金澤さんの経歴を教えてください
金澤:専門は物理学で、コンピュータを使った大規模計算処理を学んでいました。修士課程で日立製作所で学ぶ機会があったこともあり、卒業後、そのまま日立製作所に入社しました。入社後、すぐ米国MyriadProteomicsというバイオベンチャーへ出向し、そこで2年ほど仕事をして日本に帰国、筑波大学の博士課程への入学を機に学業との両立を支援してくれるメディカル・プロテオスコープ社に転職しました。そこで2年半勤めた後、30歳の時に起業しました。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2010年8月号 - p04-07にてご覧いただけます