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「「ベンチャー経営者やキャピタリストが政界へ<br> 参議院選挙で流れが加速、創業経験生かす」」

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7月11日に投開票を迎える第22回参議院議員選挙。今回の選挙では、ベンチャー経営者が政界を目指す動きが勢いを増している。政治情勢は激変しており、ゼロから事業を作り上げた経験を持つベンチャー関係者の活躍の機会が広がっている。

6月9日、東京・代々木。タリーズコーヒージャパン創業者で元社長の松田公太氏(みんなの党)は、参議院選挙に東京選挙区で立候補する予定で、初めての大規模な講演会を開いた。ゲストとして参加したのは楽天会長兼社長の三木谷浩史氏、司会進行を務めたのはトレンダーズ社長の経沢香保子氏と、檀上はまるで起業関連イベントのようだった。

ベンチャー経営者はなにも今年になって急に政界を目指すようになったわけではない。昨年の衆議院選挙で、東京4区で初当選した藤田憲彦氏(民主党)は、コミュニティサービスの小僧com(東京・千代田)の創業者。昨年11月には、ADSL大手だったアッカネットワークスの副社長だった湯崎英彦氏が新人5人の戦いを制し、広島県知事に当選した。残念ながら落選したものの、9月の神戸市長選にはサイト制作のアイ・エム・ジェイの社長だった樫野孝人氏が挑戦した。

政界進出は、ベンチャーキャピタル(VC)出身者にも広がっている。ジャフコで産学連携などを担当した坂口岳洋氏(民主党)は昨年の衆議院山梨2区で初当選した。今年4月には同じくジャフコ出身の米沢則寿氏が民主党と新党大地の推薦を受けて帯広市長に初当選した。

ベンチャー経営者の政界進出の源流は、2001年にまでさかのぼる。この年の参議院選挙前、「『インターネット・デモクラシー(民主主義)』を実現しよう」との旗の下、IT・ネット関連ベンチャーの経営者らが結集した。デジタルガレージ共同創業者の伊藤穣一氏やGMOインターネット社長の熊谷正寿氏ら約30人が発起人になった。連動する形で、ガーラ会長だった村本理恵子氏が小沢一郎氏率いる自由党から立候補した。

郵政選挙の2005年には、VCなどを運営するグロービス堀義人氏らを発起人とするYESプロジェクトが発足した。「若者を中心に投票率を上げよう」という目標を掲げたが、折からの堀江氏の衆院選出馬もあり、ベンチャー経営者と政治の距離が急速に縮まった。今年6月14日に開催されたイベントには松田氏も登場し、堀氏らから応援の言葉をかけられていた。

起業家は、新規事業の創造を通じて社会変革に挑む存在だ。事業を突き詰めた末に、越えられない壁に気づき、その壁を突き崩すためには政治を変えるしかないとの思いに至り、政界に向かっている。創業や経営の経験を生かして、どう政治を変革していくのか。期待したい。

※「THE INDEPENDENTS」2010年7月号より