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「「ビジネスプランコンテストが活況<br> オープンイノベーションを生かしたいベンチャー企業も主催」」

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ビジネスプランコンテストが活発に開催されるようになっている。大手ベンチャーキャピタルのジャフコも今年、ビジネスプランコンテストを共催するが、とりわけ最近増えているのが、ベンチャー企業が開催するもの。デジタルガレージなど3社もこのほど、エンジニアの起業支援を目的とするプログラムの一環でビジネスプランコンテストを実施することを発表した。起業家側にとっては、コンテストの過程でベンチャー経営者らメンターから適切な助言を聞けたり、資金や設備の支援も受けられたりするメリットがある。一方で、企業側にとっては、競争が激化する中で新しい事業の芽を少しでも幅広く集めたいという思惑があるようだ。

ネット事業インキュベーションのデジタルガレージはネットプライスドットコム、カカクコムと共同で4月19日、インターネットサービスの分野のエンジニアの開発・起業を支援するプログラム「Open Network Lab」(オープン・ネットワーク・ラボ)を始動した。資金や設備、場所の提供のほか、経営者などのメンターによるアドバイスも受けられる。同日開いた記者会見の席上、デジタルガレージの林郁代表取締役は「日本から世界に出ていくベンチャーを育てる」と意気込んでいた。

このプログラムの中核となるのが、「Seed Accelerator」と呼ぶ一種のビジネスプランコンテスト。第1回の参加者は6月まで募集する。1?3人の個人またはチームで応募する。優良優秀な案件を選び、1人あたり30万円の活動資金やインキュベーションスペース、サーバーなどのIT環境を提供する。

プログラム期間中に助言するメンターとしては、林氏のほか、佐藤輝英ネットプライスドットコム社長、安田幹広カカクコムCOO、伊藤穰一デジタルガレージ共同創業者取締役らが参加する。
最終的な発表の場では、ベンチャーキャピタリストや先輩起業家らに、開発したサービスや事業会社を披露する。評価された案件については、設立する新会社について、主催3社などが投資してスタートを支援する仕組みだ。

ここ数年、先輩格のベンチャー企業によるビジネスプランコンテストが相次いで開催されている。セプテーニ・ホールディングスは今年、第3回を開催した。サイバーエージェントは昨年、ミクシィやディー・エヌ・エーなどと共催する形で、開催した。主にインターネットでは、どのようなサービスが顧客のニーズをつかむか予想するのは難しい。デジタルガレージの伊藤氏も指摘するように、外部の知恵も生かす「オープンイノベーション」を駆使して、幅広く成長機会を模索する必要が、大手ネットベンチャーにもあるからだ。

実際、こうしたビジネスプランコンテストが新しいベンチャーを育てている。

4月中旬、パソコン用バッグなどをネットで販売するアゲハ(東京・港)が設立2周年パーティーを開いた。製品に対するユーザーの評価の声をネットでくみ取り、“売れ筋”を商品化するビジネスモデルで、順調に成長している。最近では大手流通の店舗で商品が扱われることもある。同社の木下優子社長は、良い意味で「ビジネスプランコンテストあらし」として知られる。自治体や企業などが主催するコンテストで上位入賞を続け、賞金や出資を受けて活動資金を得てきた。ビジネスプラン自体もブラッシュアップされてきたという。

こうした光の側面と反対に、ビジネスプランコンテストの活況が示す影の部分もある。あるビジネスプランコンテストの参加者の気になる発言があった。この参加者は実は、ある上場ベンチャーの社員。「社内で新規事業として何度提案しても門前払いのような形で取り上げてもらえなかった。だから、ほかのベンチャーが主催するビジネスプランコンテストに望みを託すしかなかった」という。その一方で、このベンチャー自身、ビジネスプランコンテストを準備していると言われている。社内のリソースを生かし切れていないベンチャーが、いくらビジネスプランコンテストを開いても、あだ花で終わってしまうのではないだろうか。

※「THE INDEPENDENTS」2010年5月号より