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「「沸騰!ソーシャル・アプリ!!<br> スピード上場や海外進出の期待高まる」」

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ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で利用するソーシャル・アプリ関連ビジネスが盛り上がっている。ソーシャル・ゲームの領域を中心にまさに沸騰中。先行したベンチャー企業が短期間でのスピード上場を目指したり、開発に投資するマネーの動きも活発になったりしている。

3月18日夜、東京・渋谷のシティホテルの宴会場に200人ものクリエイターやエンジニアが集まった。GMOインターネットが主催したイベント「アプリやろうぜ!byGMO」。ソーシャル・アプリで一定の実績を挙げたベンチャー経営者らの講演と合わせ、GMOが資金や設備の面での支援体制を説明した。関心は高く、応募者数は約1000人で競争率は約5倍だった。Ustream(ユーストリーム)での生中継も、ならして500人ほどが視聴していた。

ソーシャル・アプリのプラットフォームを運営する田中良和グリー社長やソーシャル・アプリ開発の内藤裕紀ドリコム社長らの“成功物語”に聞き入った。モバゲーを運営するディー・エヌ・エーの守安功取締役は「足元の状況は、とんでもない勢いで、売上利益が伸びている」とぶち上げた。

熊谷正寿GMO社長は「ソーシャル・アプリはサーバー維持のコストと手間が大変。サーバー運用が得意なうちと、クリエーターやエンジニアのみなさんとが力を合わせれば、ソーシャル・アプリに大きな風を吹かすことができるのではないか」と訴えた。

「アプリやろうぜ!」では、エンジニアらからソーシャル・アプリ開発プロジェクトをエントリーしてもらい、審査して、開発費の支援や運営キット提供、共同オフィス、ネットメディアを使った集客支援など全方位で支える方針。実際の収益もあがる優秀なビジネスには本格的な出資を受ける機会もあるという。

ソーシャル・アプリの成長性をめぐる支援や投資の動きは、確かに活発になっている。

独立系ベンチャーキャピタルのインフィニティ・ベンチャー・パートナーズは、ミクシィのソーシャル・アプリで大きく先行したソーシャル・ゲーム「サンシャイン牧場」を運営する中国レクーメディアと共同出資で、サービス開始からわずか2カ月の昨年10月、日本法人を設立した。業容は急拡大しており、現在はキャピタリストが社長を務めているが、今年経営陣を見直し、来年にはスピード上場することを目指している。

ngi groupは、ソーシャル・アプリのプロジェクトに出資する形で資金を供給している。公開してから開発するというくらいソーシャル・アプリの成長スピードはかなり早い。金子陽三ngi社長は、「株式に投資して、企業の業績が上がってから、IPOやM&Aで投資回収するという時間軸とは合わないのではないか」と考え、こうした出資の仕組みを提案している。

なぜ、これほど、ソーシャル・アプリは盛り上がっているのか。mixiやモバゲータウン、GREEなどが昨年から今年にかけて相次いで、外部企業のゲームアプリを導入するオープン化を実施した。ユーザーと課金の仕組みが用意されており、開発したソーシャル・アプリを投入すれば、もし好評であれば、またたく間にユーザーを集め、収入が上がる可能性があるからだ。しかも、グーグルが主導して定めた「オープン・ソーシャル」という規格に適合していれば、そのまま海外の同じ規格のSNS向けにも売り込めるわけだ。

「10年に一度のビッグウェーブが来た」。iモードが始まったばかりのときにフロントランナーの一人としてビジネスを立ち上げた真田哲弥Klab社長(当時サイバード副社長)は、こんな言葉でソーシャル・アプリがビッグビジネスに育つ可能性を表現している。海外では、ソーシャル・ゲームで、サービス開始後2年半ほどで時価総額2000億円などと言われるZyngaなどの事例もある。挑戦するに不足のないマーケットである。

※「THE INDEPENDENTS」2010年4月号より