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「「米国発の起業イベント「スタートアップ・ウイークエンド」が東京で開催<br> 週末3日間で事業を生み出せ!」」

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技術者やマーケッター、財務・経理の専門家らが集まり、週末の金?日の3日間で、実際のウェブサービスをプログラミングして作り、事業計画も立案するという米国生まれのイベント「スタートアップ・ウイークエンド」がこのほど、日本で初めて、東京で開催された。IPOの低迷などで起業マインドがややしぼんでいるともささやかれることも少なくない。新しい風が企業の流れを再び活性化する。

開催したのは「スタートアップ・ウイークエンド・トーキョー」。告知から1週間足らずで開催するという事情があったため、今回は昨年末の12月19?20日、土日2日間の短縮版で実施した。場所は、主催者側の一人が勤務する東京・千代田のKDDIウェブコミュニケーションズだった。

米国発で世界では多数の都市で開催されている活動だけに、30人強の参加者の半分は外国人。IT系企業のプログラマーや弁護士など多様な人材が集結していた。

イベントではまず、実際にアイデアを持つ参加者が、自分のビジネスプランを簡単に説明した。その後、ほかの参加者は気にいったアイデアを選んで数人ごとのチームに分かれる。この際、プレゼンが得意だったり、プログラムが組めたりといった具合に、各人の強みをうまく組み合わせてチームを作り上げることがポイントだ。それぞれのチームは深夜まで取り組むなどして、事業計画とサービスのひな型を作り上げた。

日曜日午後に行われたビジネスプラン発表会で、最優秀賞を受賞したのは、ヨガを手軽に学べるiPhone向けアプリ「Wubble」を開発したチーム。iPhoneを手にヨガのポーズをとるとうまくいった場合、音で教えてくれる仕組み。発表会では実際にポーズをとる熱演で説明していた。

収益面での計画も評価された。若い女性らを中心に幅広い市場が見込めることを強調。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)との連携で利用者を増やす。売り上げ構成でも、アプリ課金にとどまらず、広告や関連グッズのアフィリエイト販売など幅広い収益モデルを提示していた。

今回のイベントのもう一つの特徴は、米国で実績のある起業家が審査に携わったこと。シリコンバレーの起業家グループである「Geeks on a Plane」のメンバーであるDave McClure氏である。今回あわただしく開催したのも、McClure氏の来日日程に合わせたためだった。

McClure氏は、シリコンバレーで活躍するテクノロジー系の起業家であり、スタートアップへの有力投資家として知られる。ネット上での小口決済サービスを提供するPayPalでマーケティングディレクターを務め、その後、投資家に転身した。クラウド関連や流行のツイッター周辺サービスを提供するインターネット関連ベンチャーに投資している。

McClure氏が、シリコンバレースタンダード、すなわち、IT分野では国際標準で、事業を評価したわけである。日本のビジネスプランコンテストの類ではまず、ないことだ。

今回は短縮日程という時間的な制約のせいで、興味深いアイデアはあったものの、紙の計画段階にとどまり、サービスのプロトタイプ作成まで至らなかった例が目立った。東京版の主催者であるジョニー・リー氏は、「早ければ2月にも3日間の本格的なスタートアップ・ウイークエンドを開催したい」と話していた。景気低迷などの影響で、会社では新規事業の取り組みが許されない人は増えている。米国などのスタートアップ・ウイークエンドでは、実際に会社を設立する事例も少なくないという。週末に個人の立場で、新しいビジネスを生み出す試みは、起業という選択肢を再び身近なものにしてくれそうだ。

※「THE INDEPENDENTS」2010年2月号より