■  管理職の負担と育成の限界

 日本企業では管理職不足が深刻化し、若手の7割以上が管理職を望まない状況が続いています。管理職は現場業務と個別育成を同時に抱え込み、十分な支援を行えないまま負荷だけが増大しています。また、一律的な育成プログラムでは多様化した価値観に対応できず、育成は属人化し、組織の生産性と競争力の低下を招いています。本来、管理職は組織の成長を牽引する要ですが、その機能が十分に発揮されていないことこそ、現在の日本企業に共通する構造的な問題と言えます。

人材育成における課題

 

■ 創業者の体験からの実践知をAIに実装

 当社創業者の木下氏は、台湾とのハーフとして多文化環境で育ち、価値観の異なる人材が力を発揮するための条件を考え続けてきました。リクルート在籍時には3,000名以上の育成・マネジメント指導に携わり、多様な個性に向き合う中で「誰もが同じ育成方法で伸びるわけではない」という現実を痛感します。加えて、自身も日本組織とのカルチャーギャップに悩んだ経験から、一律の育成が限界であることを強く認識しました。

 管理職として部下に寄り添いたくても時間が足りず、最も向き合いたい社員ほど手が届かないという矛盾。現場で繰り返し見たこの構造的問題に対し、「育成を属人的な経験に頼らず、誰でも再現できる仕組みにする必要がある」と確信、当社を創業しました。その後、製造・不動産・IT・自治体など69団体・2,000名以上の育成支援を通じ、成果の出る育成メソッドを体系化。これらの実践知をもとに、育成専門AI「Core Uniq」が誕生しました。

Core Uniq による貢献

 

■ AIによる育成再設計と今後の展開

 Core Uniqは、AIを活用して管理職の育成業務を支援し、組織全体の育成力向上を実現します。個人の経験や勘に依存しない育成が可能になり、管理職の負担を軽減しながら、個別最適な育成が組織全体に広がります。当社独自の育成メソッドと多様性理解に基づく設計により、現場に即した実践的な支援を提供。継続的な活用を通じて、組織全体の育成力が底上げされ、育成ノウハウが企業の資産として蓄えられます。東京と名古屋を起点に事業を展開し、従業員50〜1,000名規模の企業を中心にサービスを提供していきます。ビジネスモデルは月額サブスクリプションと初期導入費を組み合わせた形で、中長期的には国内100社導入を目指し、2030年までにアジア展開も視野に入れています。

AIと人が協働する、新しい育成の時代へ

 


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島弁護士事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏
 

 GivinʼBackは、自ら培った人材育成のノウハウと生成AI技術を活用し、人材育成用のAIチームメイトを提供します。
 知財に関して、生成AI分野では先行出願が既に相当数あるものの、人材育成に特化した機能に絞ることで、こうした機能について特許化を狙う余地はあると考えます。また、人材育成サービスでは、収集した利用者のデータ・情報を活用することで、さらにサービスの質の向上を図ることが可能です。こうしたデータ・情報を活用できるよう、利用規約等で必要なケアを行うことも、競争優位を保つ上で重要と考えます。

弁護士法人内田・鮫島弁護士事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏

 
 
※「The INDEPENDENTS」2025年12月号 - P.11 掲載
月刊誌バックナンバーはこちらからご確認ください。