ウエルインベストメント株式会社 代表取締役社長 瀧口 匡 氏  

ウエルインベストメント株式会社 (HOME - WERU Investment Co., Ltd.)
代表取締役社長
瀧口 匡 氏 Takiguchi Tadashi


1986 年 野村證券株式会社入社
2002 年 株式会社アクセル・インベストメント 代表取締役
2005 年 ウエルインベストメント株式会社 代表取締役社長
2009 年 早稲田大学 学術博士( 国際経営)
2017 年 早稲田大学 客員教授
 

インデペンデンツクラブ 代表理事 松本 直人 氏

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


大学発VCの先駆者が語る、日本のスタートアップの展望と地域への期待

■ 大学発ベンチャーキャピタルの原点

松本:本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、ウエルインベストメント株式会社設立の経緯と現在の状況をお聞かせください。

瀧口:弊社は、早稲田大学の「アントレプレナールリサーチユニット(WERU)」を母体に1998年に設立されました。日本で初めて、大学資源を源流とする独立系ベンチャーキャピタルとして設立されました。大学の知見や研究成果を社会につなげ、新しい産業を創出することを目的に活動してきました。創業から25年を超え、現在では運用資産総額約300億円、投資件数は100件以上、成功事例は40件を超え、大学発VCとして着実に実績を積んでいます。

松本:まさに「大学から始まったVCの原点」といえますね。

瀧口:私は2005年に参画し、今年でちょうど20年になります。当時は国内中心のオーソドックスなベンチャーキャピタルでしたが、次第にテクノロジー分野、特にアーリーステージへの投資にシフトしました。いまでは投資先の約7割がアメリカの大学発等のディープテックスタートアップです。

 

■ Empowering Innovation

松本:海外展開も積極的に進められているのですね。

瀧口:私たちの理念は“Empowering Innovation”。世界のアカデミアや起業家が生み出すイノベーションと資本市場を結びつけ、社会をより良くしていくことです。私たちの投資は短期的なリターンを追うものではなく、シーズからグローバルベンチャーへと育つ過程を長期的視点で支援することに重点を置いています。そのため社内の人員の入れ替わりも少なく、投資先との信頼関係を長期にわたって維持する文化が根付いています。

 

■ 日本のスタートアップエコシステムの課題

松本:今の日本のスタートアップエコシステムには、どんな課題を感じますか。

瀧口:最大の課題は「流動性」です。アメリカでは未上場株式のセカンダリ取引が非常に活発で、一定の成長を遂げた企業には必ず出口があります。日本でも大手証券会社がセカンダリサービスに参入し始めており、これは大きな一歩だと思います。流動性が高まれば、VCがより積極的にリスクを取れるようになり、スタートアップの挑戦も広がります。

松本:米国ではファミリーオフィスも長期投資家として重要な存在ですね。

瀧口:アメリカではファミリーオフィスが長期のスパンで企業に投資し、IPO後も株式を保有し続けるケースが多い。日本では長期投資が根付いておらず、このような投資家が育ちにくいのが現状です。税制や制度が整えば、超長期の視点で企業を支える文化が根付くはずです。

   インデペンデンツクラブへの期待

松本:最後に、インデペンデンツクラブへの期待をお聞かせください。

瀧口:まず、地方展開を成功させた点を高く評価しています。当初は「本当にうまくいくのか」と思っていましたが、今や全国で認知される存在になりました。そして20年以上にわたって活動を続けてこられた継続力に心から敬意を表します。こうした非営利的な精神を持ち続けている組織は本当に稀です。今後は、人材育成にも注力してほしいですね。地方からも新しい起業家が次々と生まれてくるはずです。

松本:ありがとうございます。今年から高校生・中学生向けの「スーパースチューデント構想」を始め、全国のトップ校のアントレプレナーシップ教育に対して寄付金支援を行っています。

瀧口:それは素晴らしいですね。イノベーションの源泉は教育にあります。インデペンデンツクラブが、「継続」と「人材育成」という二つの軸で進化を続けていくことを、心から期待しています。


interviewed by kips 2025.9.12


※「THE INDEPENDENTS」2025年11月号 P.12より
※ 冊子掲載時点での情報です