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【國本 行彦】 1960年8月21日生。 東京都立志村高校卒業。 1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。 2006年1月5日(株)インディペンデンツ(現(株)Kips)設立、代表取締役就任。 2015年11月9日 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ 代表理事就任(現副代表理事) 2020年6月 (株)ラクス社外取締役就任 |
グローバル・スタートアップ・キャンパスへの期待
高市新政権のもと、グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSC)構想が具体化してきました。GSCは日本の成長戦略を支えるディープテック分野の中核拠点として、国内外の大学・研究機関、研究者、スタートアップ、企業、アクセラレーター、VCなどが目黒・渋谷エリアに集積することを目指しています。単なる起業支援ではなく、研究・産業・海外連携を結びつける「エコシステムづくり」を志向している点が特徴です。
GSCの取り組みで特に重要なのは、海外企業・海外研究者との連携を前提とした設計にあります。ディープテックの成長サイクルは長期かつ複雑で、一国だけで完結することはほとんどありません。試作は日本、規制対応は欧州、臨床・実証はアジア、販売は北米といったように、複数地域をまたぐ国際的な事業構造が一般化しています。そのため、海外スタートアップが日本に研究拠点を置き、日本企業・研究機関との協働を通じて事業化を加速できる環境づくりは、GSCの柱となる部分です。
また、ディープテックの事業化には、製造・評価・実証のパートナーが不可欠です。日本には精密加工、医療機器、安全性評価など、世界的にも評価される産業基盤が存在します。これらの強みを活かすことで、世界のスタートアップが「日本で仕上げる」動きを後押しできる可能性があります。GSCがこうした産業領域と海外企業を結ぶハブとなれば、日本発のイノベーションにとどまらず、世界の技術が日本を経由して成長する新しい流れを生み出すことも期待されます。
一方、ディープテックの事業化において避けて通れない課題もあります。その一つが知財戦略の複雑さです。特許が重層化すると事業の自由度が制約されることがあり、研究段階から知財設計を慎重に進める必要があります。また、人材の流動化も重要なテーマです。優秀な研究者や起業家ほど国境を越えて移動し、複数のプロジェクトに関わる時代であり、人材の流出入を前提とした柔軟な環境づくりが欠かせません。
GSCが目黒・渋谷という国際性と利便性を兼ね備えた地域に根を下ろし、国内外の知が交わる拠点として育っていくことを期待しています。
■ 東京インデペンデンツクラブ(2025年12月8日開催)では「グローバル・スタートアップ・キャンパスの描く未来」をテーマに特別セッションを行います。オフライン・オンラインともにどなたでもご参加できます。
※「THE INDEPENDENTS」2025年12月号 - P.18 より

