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「「グローバル・アントレプレナーシップ・ウイーク・ジャパンが開催<br> 起業と起業家支援を社会的なムーブメントに高めるきっかけに」」

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1月中旬、東京や京都で、「グローバル・アントレプレナーシップ・ウイーク・ジャパン」(GEWジャパン)というイベントが開かれた。起業家教育で知られる米国のカウフマン財団と、英国政府による起業家精神促進組織「Make Your Mark」が2008年から始めたアントレプレナー(起業家)育成の世界的イベントの一環だ。期間中、世界85カ国で約400万人の参加者があったという。米国内のイベントでは、オバマ大統領がコメントを寄せ、日本のイベントにはジョン・V・ルース駐日米国大使が参加するなど、盛り上がりを見せた。

「日本でも起業家を支援しようという動きが広がっているのが感じられる」。普天間移設問題に対する鳩山政権の対応が迷走する前だったせいか、若干のリップサービス交じりに、ルース大使は語った。ルース大使が参加したのは、政策研究大学院大学(東京・港)のホールで、GEWジャパンが直接主催した「グローバルに活躍する起業家」と題したシンポジウム。「起業家精神に関する話題?直接得られる経験」をテーマに対談形式で話した。環境・新エネルギーなどのクリーンテックの分野は起業が盛んとの認識を示したうえで、「うまくいかないところも多数あるだろうが、第2のグーグルが生まれる可能性はある」と期待していた。

米有力弁護士事務所、ウイルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロサーティの最高経営責任者を務めるなど、シリコンバレーで25年間働いてきた。ユーチューブなど多数のベンチャー企業を支援・育成したことで知られ、日本着任以来、かねて「日本でもグーグルのようなベンチャーを育てるのを支援したい」と発言しているという。

このイベントのほか、「アーンスト&ヤング・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン2009」(EOYジャパン)や「TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)設立シンポジウム」、「BRIDGE2009」など14のイベントがGEWジャパンの一環として開催された。

EOYでは、来年モナコで開かれる世界大会に日本を代表して参加する起業家が選出された。TEPでは、つくばエクスプレス(TX)沿線地域の世界最先端の技術をもとに、産官学の連携と地域住民の支援で起業家を輩出する方針が打ち出された。BRIDGEでは、IT・ネット・ソフトウエアの分野で、各所で同時多発的に活動している小規模な起業家支援組織を横串に刺して束ねる活動を試みていた。

10年ほど前、東京・渋谷を中心とする地域で、「ビットバレー」と呼ばれるインターネット分野の起業家の集まりがあった。活動内容についての是非はさまざまだが、起業家と支援者を包含するエコシステムの機能を果たしていたのは事実であり、上場企業も生み出した。しかし、ここ数年は、ビットバレーに匹敵するようなビジネスを語り合い、支援し合うような場はなかった。

ルース大使のスピーチに合わせて、菅直人副総理もビデオでコメントを寄せた。ただ、「日本はベンチャー企業が育っていく環境にありません」と問題点を指摘したまではよかったが、話の大半はなぜかCo2の25%削減のことばかりで、ベンチャー支援の具体策には触れずじまい。だからこそ、民間による起業と起業支援のエコシステムづくりを社会的なムーブメントにしていく必要がある。グローバル・アントレプレナーシップ・ウイークをそのきっかけにしたいところだ。

※「THE INDEPENDENTS」2010年1月号より