■ 独自技術で検査の常識を変える

 大阪大学発のスタートアップである当社が開発した「GLEIA(電気化学免疫測定法)」は、従来の大型検査機器を1万分の1のサイズ、1000分の1の価格で実現できる革新的技術です。わずかな血液や唾液から10分程度で検査が可能で、200種類以上の検査に応用が可能です。これにより病院だけでなく、自宅や外出先でも医療グレードの検査を受けられる未来を目指しています。
GLEIAで社会課題を解決

■  心不全分野での大きな可能性

 重点領域は世界で約6,500万人が罹患する「心不全」です。心不全の重症度評価や再入院防止に重要なのが「NT-proBNP」というバイオマーカーです。これは心臓に負担がかかると血中濃度が上昇する物質で、国際的な治療ガイドラインでも測定が推奨されています。

 従来は大病院の大型機器でしか測定できませんでしたが、当社は1滴の血液から10分で測定し、結果を即座に医師と共有できるシステムを開発中です。在宅での心不全管理を可能にすることで、再入院率や死亡率を低下させる可能性があり、救急・災害医療や介護現場でも活用が期待されています。
様々なシーンにおけるGLEIAの活用

■ 成長戦略と市場展開

 これまでに累計約9.5億円を調達(シリーズB-2まで)しており、さらなる成長に向けて資金調達を継続しています。

・売上計画:2028年 29億円 → 2030年 125億円
・展開分野:心不全検査を軸に、感染症、がん、メンタルヘルス、動物医療へ拡大
・海外戦略:日本・オーストラリアを起点に、欧州(2028)、米国(2029)、中国・インド(2031)、ASEAN・中東(2032以降)へ展開

■ 販売先・提携先

 当社は事業化に向けて、すでに医療機関向け複数の販売チャネル、センサメーカー、アプリ開発会社、製造パートナーとの連携を進めています。顧客ターゲットとしては、診療所・病院、在宅医療に加え、スポーツチーム、動物病院、一般消費者(OTC市場)を考えており、機器本体と消耗品(センサ)の組み合わせにより、安定した収益モデルを構築していきます。


 
コメンテーターより
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏
 

 イムノセンスのように強みとなる技術が明確な企業においては、言うまでもなく、自社技術を適切に保護することが重要です。こうした技術保護の望ましい在り方の一つとして、技術の公開が前提となる特許権等の“知的財産権”と、社内のみで秘匿し非公開とする“ノウハウ”の双方を活用する方法が挙げられますが、同社ではこのような方法による技術の保護が、既に高い精度で実現されているものと感じました。
 今後は開発した技術をベースに、様々なパートナーとの連携や積極的な海外展開を進めていくことが期待されます。

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 稲垣 紀穂 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年10月号 - P.14 掲載
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