<イベントレポート>

2025年6月2日 インデペンデンツクラブ第10期定時会員総会&インデペンデンツクラブ大賞表彰式
@ Tokyo Innovation Base(TiB)
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/764

 

<特別表彰>

Terra Drone株式会社ロゴ




Terra Drone株式会社

設 立  :2016年2月9日
所 在 地:東京都渋谷区南平台町 2-17 A-PLACE 渋谷南平台4階
資 本 金:1,348 百万円 (2025年1月現在)
事業内容:ドローンソリューションプロバイダー
I P O  :2024 年 11 月 29 日
      東証グロース市場に上場 ( 証券コード : 278A)
      時価総額 ( 公開 ) 21,901 百万円
      時価総額 ( 初値 ) 20,149 百万円
U R L  :  https://terra-drone.net

Terra Drone株式会社 代表取締役社長 徳重 徹 氏

 

 

代表取締役社長 徳重 徹 氏

生年月日:1970年1月23日
出身高校:山口県立柳井高校

九州大学工学部を卒業後、住友海上火災保険 ( 現三井住友海上火災保険 ) に入社し商品企画・経営企画を担当。
2000 年に米サンダーバード国際経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得し、米国でベンチャー企業の支援会社を立ち上げる。帰国後、2010 年に Terra Motors 株式会社、2016 年に TerraDrone 株式会社を設立。
徳重氏を取り上げた書籍『常識を逸脱せよ。日本発「グローバルメガベンチャー」へ テラドローン・徳重徹の流儀』(著者:山口 雅之) がある。

 

書籍『常識を逸脱せよ。日本発「グローバルメガベンチャー」へ テラドローン・徳重徹の流儀』

 


<特別講演>

 2012年に開催された「第1回インデペンデンツクラブ大賞グランプリ」受賞の徳重 徹 氏 ( 当時、株式会社テラモーターズ代表取締役 ) は、このたび Terra Drone 株式会社において新規上場を果たされました。その功績を称え、特別表彰を行うとともに、徳重氏にご講演いただきました。

■ グローバル展開と独自の技術で新産業を切り拓く

 テラドローンは2016年の創業以来、「新産業で世界で勝つ」というテーマを掲げ、ドローン開発とソリューションを国内外で展開してきました。おかげさまで上場を果たし、現在では売上の過半数を海外が占めるまでに成長しています。特にドローン事業では、屋内目視点検用ドローンの有線給電による長時間運用など、他社にはない独自機能で世界市場を切り拓いています。
ドローン運航管理システム(UTM)
 当社の大きな強みは、ドローンの安全な飛行を支える運航管理システム(UTM)です。このシステムは、欧州7カ国、カナダ、中東などで導入されており、欧州やカナダでは「1国1システム」として採用されています。送電線やパイプラインの点検、ドローン物流といった、日本ではまだ現実的ではないと思われている事業が、海外ではすでに実用化されており、空飛ぶクルマの実現もそう遠くありません。テラドローンは、これらの「空の道」を整備するプラットフォームとして、欧州やカナダでの地位を確立し、今後は米国市場への進出も目指します。

■ 挑戦を支える「やりきる力」

 私はテラドローンの他にも、EVバイク事業の「テラモーターズ」、充電インフラ事業の「テラチャージ」の合計3社を創業しています。テラモーターズはインドで年間2万台のEVバイクを販売し、競合が撤退する中でも成長を続けています。テラチャージは、EV化を支える充電設備の普及を加速させ、社会インフラを支える役割を担っています。

 こうした挑戦の連続には、当然ながら多くの失敗も伴いました。PMFの難しさ、資金や組織の危機にも何度も直面しています。それでも、事業で最も重要なのは「やりきる力」だと確信しています。どれほど困難な状況でも、とにかくやり続けていれば、最後には何とかなる。これが私の信条です。

■ 世界で戦う覚悟を持って挑戦し続ける

 日本のスタートアップでありながら、創業当初から世界市場を視野に入れて活動してきた当社ですが、イーロン・マスク氏やシャオミのレイ・ジュン氏のような強力なライバルがひしめく海外の競争は凄まじいものです。国内基準に甘んじることなく、世界のトップ企業と同じ土俵で勝負し、日本から新産業で世界的にスケールする事業を生み出さなければ、日本の未来はないと強く感じています。

  どのような困難な状況であっても、起業家として諦めない気持ちを持ち続けることが何よりも大事だと思っています。そして、一つの成功に満足することなく、常により高い頂を目指し、世界に挑戦し続けること。これが、本日皆様にお伝えしたいメッセージです。ご清聴いただき、誠にありがとうございました。

 


<トークセッション>

第74回事業計画発表会(2009年11月開催)に、当時イーモービル(株)代表取締役として徳重氏が登壇し、松田修一氏が講評いたしました。

インデペンデンツクラブ名誉会長
早稲田大学名誉教授 松田 修一 氏
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TerraDrone株式会社
代表取締役社長 徳重 徹 氏

  松田氏・徳重氏のトークセッションの様子

■ 成長の鍵となるグローバル戦略

松田:本日はおめでとうございます。御社の目覚ましいグローバル展開、特に単なる拠点設置に留まらない緻密なパートナー戦略に感銘を受けました。

徳重: ありがとうございます。海外展開のアプローチは事業ごとに異なります。EV事業では自社で現地法人を立ち上げましたが、ドローン事業では現地企業への出資から始め、段階的に子会社化する手法をとっています。国、プロダクト、そしてタイミングによって最適な戦略は異なるため、常にその時点での事業成功の鍵を見極めることが重要です。

松田: 誰と組むか、そして事業をスタートさせる「今」を見極めるスピード感は、徳重さんの並外れた感性だと感じます。

■ インフラ老朽化への挑戦と社会貢献

松田: 先日八潮市で道路陥没事故があったように、日本ではインフラの老朽化が深刻な問題です。特に下水道のような地下インフラは、ドローンなしでの点検は困難でしょう。

徳重: おっしゃる通りです。下水道だけでなく、港湾、高速道路、橋梁など、建設から50年以上経過したインフラが急増しており、そのメンテナンスは喫緊の課題だと考えています。

松田: PFI事業という国と民間が協力して公共事業を進める枠組みがありますが、特に地下インフラの更新は国民の関心を得にくいという課題がありました。ぜひ御社には、この分野で先陣を切っていただきたいと期待しています。

■ 資金調達の秘訣とデカコーンへの道のり

松田: 貴社は上場前に126億円もの資金を調達されました。これから資金調達を目指す企業に向けて、何かアドバイスはありますか。

徳重: 資金調達の戦略は、企業のステージによって大きく異なります。アーリーステージでは、経営者自身の経歴や事業への熱意、そしてエンジェル投資家のような有力な方々からの信用の裏付けが非常に重要です。一方で、レイターステージでは、いかに保守的で、実現可能性の高い計画を示せるかが鍵となります。特にアーリーステージの起業家の方々にお伝えしたいのは、「この事業は自分がやらなければならない」という強い思い入れを持つことです。私自身、「新産業で世界で勝つ」という強い思い入れがあったからこそ、支援を得られたのだと信じています。

松田:デカコーンを目指しているというお話もありましたが、今後はどのような展望をお持ちですか。

徳重:私が一貫して目指しているのは、日本から世界にインパクトを与えるイノベーティブなことを成し遂げることです。前例がないからと諦めるのではなく、自ら前例を作っていく。実際に、テラドローンとテラチャージの2社の代表を兼務したまま上場するという、初のケースも東証に認めていただきました。然るべき事業体で、然るべきタイミングで、さらに大きな挑戦をしていきたいと考えています。
 日本経済が世界の中で存在感を失いつつあるのは、GAFAMやテスラのような新しい巨大企業が生まれてこないからです。日本から世界で戦える企業を生み出す、その一翼を担うべく、挑戦を続けていきます。 
 

※「THE INDEPENDENTS」2025年7月号 P.4-5 より
※ イベント開催時点での情報です