弁理士法人 正林国際特許商標事務所
副所長・シニアパートナー・弁理士
齋藤 拓也 氏 Saito Takuya

1964年7月24日生。
兵庫県立伊丹高校出身。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻修了;米国Carnegie Mellon University, MSIA(MBA)
1990 年4 月株式会社CSK(現SCSK)入社、システムエンジニアとして、金融、建設分野のシステム開発に携わる。社内ベンチャーのアイディアを正林氏に相談したことがきっかけで、知財の事業活用戦略に強い興味を持つ。
2003 年9 月正林国際特許商標事務所入所
現在は、ICT・ソフトウェア関連発明、ビジネスモデルを中心に、様々な企業ステージの知財のコンサルティングを行っている。
日本知財標準株式会社 顧問
 

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


「スタートアップ支援と知財の現在地」

■ 国内外を見据えた知財サポート体制

松本:貴所のクライアントは、スタートアップから大手企業まで多岐にわたります。

齋藤:多くの中小企業やスタートアップには、知財部や特許部がありません。そのため、スタートアップ支援においては、出願手続きを代行するだけでなく、事業戦略を踏まえて最適な知財戦略を提案する役割が不可欠です。当事務所は、その役割を積極的に担うとことで出願した知財が事業価値を生み出すまでのプロセスを包括的にサポートしています。

松本:事務所名に「国際」と冠しているのは、どのような背景からですか。

齋藤:弁理士業界において、国内だけでなく海外の案件も扱えるようになることは、一つの到達点と見なされることが多いです。創業者である正林真之の、グローバルな視点を持って業務に取り組むという想いが込められています。同様に、商標の重要性に鑑みで事務所名にも「商標」を加えています。

■ ブランド戦略としての商標活用

松本:特許と商標とで、知財戦略は異なってくるのでしょうか。

齋藤:特許や意匠(デザイン)と異なり、商標登録においては基本的に「創作性」は問われず、先に出願した者に権利が発生します。また、商標権は各国で登録する必要があるため、事業を展開する国や地域で、早期に商標権を確保しておくことが重要になります。

松本:特許権は存続期間が20年(または25年)と限られていますが、商標権には期間がない点もポイントになってきそうですね。

齋藤:商標を単なる名称やロゴではなく、顧客からの信頼やイメージといった無形の価値を持つ「ブランド」にまで育て上げることが肝になります。例えば、「QRコード」は、2014年に特許権が切れているものの、その名称と二次元コードのイメージは、もはや世界共通の「ブランド」として定着しています。
 商標は陣取り合戦であり、QRコードがそうであったように最初は特許で技術を保護したとしてもそれには期限があり、ブランド価値は永続し得る、という点を踏まえて戦略を練ることが重要です。
 当事務所では、元特許庁の審査官や審判官、裁判所の調査官、金融機関出身者など、多様なバックグラウンドを持つ専門家がチームを組んで対応しています。それぞれの知見を組み合わせることで、単なる出願代行にとどまらず、お客様の事業戦略に貢献できる知財サポートを提供できると考えています。

 

■ M&Aを見据えた新サービス

松本:ところで、スタートアップのM&Aイグジットに役立つサービスを開発されたそうですね。

齋藤:特許情報を解析して「M&A候補企業リスト」を自動で作成するサービス『MAIPL(メイプル)』として、2025年5月より株式会社ストライクからの販売を開始したところです。数年前から東京大学の坂田研究室、UTEC、ストライクで実施されている共同研究に当事務所も協力しており、従来にはない手法で特許情報から“相性の良さ”を判定することで、候補企業に客観的な裏付けがあるロングリストが手に入る点が特徴です。価格も比較的リーズナブルなので、スタートアップ企業の方がイグジットを検討される際にもぜひ使ってみていただければと思います。 

 

■ インデペンデンツクラブへの期待

松本:最後に、インペンデンツクラブへの期待をお聞かせください。

齋藤:スタートアップの経営者を継続的に支援する、非常に価値のある場だと感じています。これは、長期的な積み重ねが重要になる知財戦略と通じるものがあります。そういった意味で、インデペンデンツクラブの姿勢と、当事務所が目指す知財支援のあり方は、親和性が高いのではないでしょうか。当事務所も、経営者の皆様にとっていつでも頼れる存在で有りたいと思っています。松本さんもまだ若いですし 、これからどんどん活躍してくださると期待しています。 

interviewed by kips 2025.4.16


※「THE INDEPENDENTS」2025年5月号 P.14より
※ 冊子掲載時点での情報です