PicoCELA株式会社 代表取締役 古川 浩 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

NASDAQ上場とグローバル展開

鮫島:NASDAQ上場おめでとうございます。なぜNASDAQ上場を目指されたのですか。

古川:当初は日本でのIPOを目指していたのですが、将来のグローバル展開や市場の流動性、ドル建て資金調達への希望からNASDAQ上場を決断しました。

鮫島:グローバル展開は創業当初から見据えていたのですか。

古川:はい。これまでも代理店を通じた海外販売などにも着手してきました。テクノロジーはSNSなどと違い言語の壁を越える性質があります。当社は海外に在籍するエンジニアもいるため、技術面でのグローバルな体制は整っています。R&Dは海外展開のために必ずしも海外移転する必要はなく、海外はあくまで大きな市場として捉えています。国内でのユニークな市場開拓手法を海外展開においても応用していこうと考えています。

鮫島:NASDAQ上場は海外市場での認知度向上や資金調達手段の拡充という側面から非常に重要です。

 

Wi-Fiによる広域無線通信システム

古川:当社は独自の無線多段中継技術「PBE」により、従来のLAN配線に頼らない無線ネットワークを実現しています。各Wi‑Fiポイントが無線で中継し合う仕組みはスモールセル基地局の低コスト導入を可能にし、エッジコンピューティングと連携したクラウド管理システム「PicoManager®」でビッグデータ解析や新たなサービス提供を推進しています。特許に支えられた独自技術で国内外のDXに大きく貢献していきます。

知財を武器にしたビジネスモデル
ライセンス収益と市場防衛の実践

古川:当社は九州大学時代に取得した知財を活用し、国内外での特許出願を進めることで企業価値を高めるとともに、大学とのwin-winの関係を構築してきました。

鮫島:大学が海外特許に資金を投じるという事例は非常に稀です。

古川:通信分野における知財戦争を背景に、創業当初から知財に投資をしてきました。製品の開発・販売だけでなく、ライセンス収入を得るための知財の活用、さらには防衛的な意味も含めた知財戦略を取ってきました。前職のNECでの経験から知財に対する意識はかなり鍛えられました。

 

知財功労賞受賞の背後にある課題と期待
九州大学工学部との連携強化の展望

鮫島:2022年に知財功労賞「特許庁長官表彰(知的財産権制度活用優良企業)」を受賞しています。

古川:創業当初からの知財に関する取り組みや成果を評価され、受賞させていただきました。九州大学の工学部では、ほとんどの卒業生が企業に就職するにも関わらず、大学内で特許に対する関心が低く、その結果、知財に詳しい技術者がなかなか育たないという問題がありました。しかし、今回の受賞をきっかけに、九州大学全体で知財への理解や意識が高まることを期待しています。

 

鮫島:最後に、NASDAQ上場における知財の位置付けについて教えてください。

古川:知財なくして上場は不可能だったと考えています。当社が赤字ながら上場と市場からの資金調達を実現できたのは、知財あってこそです。知財戦略の重要性や特許が企業の信用や資金調達に直結していることを実感しています。

 

―「THE INDEPENDENTS」2025年3月号 P.10より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
  <話し手>
PicoCELA株式会社 代表取締役 古川 浩 氏
(→ イベント登壇情報
 
NEC、九州大学教授を経て現職。
九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。
 
PicoCELA株式会社
設 立:2008年8月8日
所在地:東京都中央区日本橋人形町2-34-5 SANOS日本橋4階
資本金:100,000千円
事業内容:無線通信に関する特許技術を活用した無線通信製品の販売・ソリューション・ライセンスの提供、及びクラウド監視システムの販売


弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。