<起業家インタビュー>
保育現場の課題から生まれた子育て支援サービス
当社は、保育所を対象とした紙おむつ・おしりふきのサブスクリプションサービスを展開する企業です。前身となる会社は、2012年に創業し保育所を運営していました。45か所の保育所運営を通じて、子どもを預かるだけでは解決できない課題に直面していました。朝から晩まで様々なタスクに追われ、夜も十分な睡眠が取れない保護者たちの姿から、保育所として保護者にも手を差し伸べる必要性を感じたことが、現在のサービスにつながっています。
社会的信頼を得るために決断したTPM上場
当社は2024年12月にTOKYO PRO Market(以下、TPM)上場を果たしました。かつて市況悪化に伴う評価額の低下を懸念してグロース市場への上場を断念した経緯がありました。当初はグロース市場への上場を目指しておりましたが、昨今の市場環境を勘案して、グロース市場への上場は延期することといたしました。
ただ、社会的信頼を得るためにTPM市場への上場をすることといたしましたが、一部のVCより反対の声が上がったため、上場時への売付けを実施し、事業シナジーのある企業へ株式を売付けしてもらい、将来のグロース市場上場への足がかりを築く戦略を選択しました。
保育所×メーカーとの協業で生まれた「手ぶら登園」サービス
事業運営の転機となったのは、ユニ・チャーム株式会社からの協業提案でした。従来、保育所では保護者が紙おむつに名前を書いて持参する文化が続いており、これが保護者の負担になっていただけでなく、保育士も在庫管理や貸し借りの記録に追われていました。本来は子どもたちに向き合ったり、発達や成長について話し合ったりすべき時間が、紙おむつの貸し借りに関する対応に費やされている現状を改善するため、「手ぶら登園」が可能となる保育所向け紙おむつサブスクリプションサービスの開発に着手しました。
忙しい保育現場でサービス最適化を図る
サービス開始当初は、登園日数や使用枚数に応じた複雑な価格体系を採用していましたが、これが保育士と保護者間での無用なトラブルを招くことがありました。試行錯誤の末、シンプルな定額制に切り替えたことで、保育現場でのコミュニケーションが改善され、急速な普及につながりました。2024年2月期時点で約6500施設に導入され、契約保護者数は10万人近くまで成長しました。加えて、保育所の解約率は年0.18%という低水準を維持しています。
進んでいく子育てに対する意識改革
現在、全国の認可保育所は約4万施設あり、導入率はまだまだ低い水準です。また、「保護者が苦労して子育てをするべき」という従来の考え方が根強く残っている地域もあり、導入のうえでの課題となっています。しかし、親族との距離感や女性の働き方など、子育ての環境は大きく変化しており、この社会変化に合わせた意識改革を促していく必要性を強く認識しています。
保育現場のDX化で子育てを支援していく
現在はエプロンやお昼寝用コットカバーのサブスクリプション、保育所検索サービス「えんさがそっ♪」の展開、保育所向けキャッシュレス決済サービスの提供など、事業領域を拡大しています。子育て世代の無償労働時間の削減は3.5兆円規模の市場と試算しており、この時間の削減に向けた新たなビジネスモデルの構築に挑戦しています。
子育て世帯における様々な社会課題の解決に向けて、保育現場のDXを推進しながら、すべての人が子育てを楽しいと思える社会づくりを目指していきます。
interviewed by kips 2025.1.28
【BABY JOB株式会社】
設 立:2018年10月1日
所在地:大阪府大阪市淀川区西中島6-7-8 大昭ビル7階
資本金:100百万円
役 員:(代)上野 公嗣、灘 広樹、脇 実弘、前田 効多郎、小田切 智美、黒坂 卓司、和氣 良浩
事業内容:子育て支援事業
従業員:役員7名、従業員93名
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【代表者略歴】 BABY JOB株式会社
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※「THE INDEPENDENTS」2025年3月号 - P.2-3より