メタンを原料とする「光ものづくり」で、脱炭素およびSDGsに貢献

光オンデマンドケミカル株式会社 代表取締役CEO 津田 明彦 氏

■ 温室効果ガスから医薬品原料を創出し、化学産業に革新を起こす

 私どもは、地球温暖化の原因となるメタン(温室効果ガス)を、光エネルギー技術を用いて、瞬時に高付加価値化学品(医薬品原薬等)へと変換する、光ものづくりに取り組む神戸大学発ベンチャーです。

 GX(グリーントランスフォーメーション)に向けて、CO2とメタン、代表的な2つの温室効果ガスの削減が強く求められております。しかし、それらを原料とする化学品合成には多くのエネルギーもしくは高価な試薬を必要とします。そこで、家畜の糞尿、生ゴミ、下水から発生するバイオガス、海水・空気等から発生するメタン(温室効果ガス)を原料として、医薬品原薬・中間体、農薬原料、香料、接着剤、粘着剤、グリースなどの用途に向けて、小規模多品種の高付加価値オリジナル化合物、バイオガス由来製品、新規機能性材料を展開していきます。既に来年度からの共同生産に向けた技術指導を有償で開始しております。

メタンから化学品をつくれる?

競争優位性:津田研究室開発の光オン・デマンド合成法と従来ホスゲン化反応との比較

■ 国内外で45件の特許を保有

 神戸大学津田研究室で開発された「光オン・デマンド合成法」は、非常に強い毒性を持つホスゲンの合成に成功し、安全で小規模設備で大量に製造できる方法を生み出しました。ホスゲンを原料とする化学品市場はグローバルで十数兆円規模あり、医薬品原薬・中間体、農薬原料、ポリマー(ウレタン等)、機能性材料(カーボネート、クロロギ酸エステル等)など、多岐にわたる分野への展開が可能です。現在は神戸大学や神戸市、第一工業製薬(東証プライム:4461)と実証実験を行っています。

 

■ パイロットプラント建設とグローバル展開への道筋

 2026年度に小型パイロットプラント、2028年度には中型パイロットプラントの建設を計画しています。これにより生産能力を段階的に拡大し、5カ年で売上高50億円規模への成長を目指します。将来的には、下水処理場やバイオガスプラント等に併設する分散型化学プラント網を構築し、地産地消型の化学品生産モデルを実現します。神戸・大阪を起点とした「関西・光ものづくり拠点」を形成し、日本全国、そして世界へと事業を展開することで、化学産業の持続可能な未来に貢献します。

 

 

 
コメンテーターより
(株)AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏
 

 メタンからホスゲンの合成に成功し、今後そのホスゲンを原料とする化学品の応用範囲は巨大であることを理解しました。
 また、既に一部の製品化も完了していることも高く評価できると思います。
 しかしながら、貴社のような DeepTech の会社は生産のスケールアップのため巨額の資金調達や今後の開発にも時間を要すると思われます。
 貴社の場合、ビジネスプランは相当煉り込まれているので、これを実行する経営管理体制の構築が課題となると思われます。これからの大きな展開を期待しています。

(株)AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏



※「The INDEPENDENTS」2025年5月号 - P.8 掲載