「徳島大学発スタートアップを支援する産学連携キャピタルの取組み」
<イベントレポート>
2024年12月3日 東京インデペンデンツクラブ
@ TiB(Tokyo Innovation Base)
+ Zoom ウェビナー配信
■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/748
特別セッション『徳島大学発スタートアップを支援する産学連携キャピタルの取組み』
北岡 和義 氏 |
(モデレーター) 松本 直人 氏 |
地方大学発のベンチャーキャピタルの挑戦
松本:産学連携キャピタル(AIAC)は2020年に設立されたとのことですが、地方大学発のベンチャーキャピタルということで、設立の経緯をお聞かせいただけますか。
北岡:2016年、徳島大学に野地前学長が就任した際のビジョンがきっかけです。大学の研究を進めるためには、ベンチャー・スタートアップの成長性を活かすべきという強い思いがあり、その構想から約4年の準備期間を経て実現しました。
松本:当時、他大学の状況はいかがでしたか?
北岡:東京大学や京都大学などの旧帝大では文科省の支援でベンチャーキャピタルが設立されていましたが、地方大学が設立した事例はありませんでした。様々な議論を重ねた結果、徳島大学役員が設立した一般社団法人大学支援機構を親会社とする独自のスキームを構築しました。これにより、将来的なファンドからの配当を大学への寄付として還元できる仕組みを実現しています。
ファンドの運営体制と実績
松本:現在のファンドの規模と実績を教えていただけますか?
北岡:ファンド規模は約10億円で、阿波銀行を中心に地元企業6社から出資いただいています。これまでに5社の徳島大学発ベンチャーに投資を実施しました。運営面では、地域経済活性化支援機構(REVIC)から専門家派遣を受け、デューデリジェンスや経営支援を行っています。
松本:投資判断はどのように行われているのでしょうか?
北岡:3名の取締役による投資委員会で判断しています。多数決制を採用していますが、基本的に合議での意思決定を心がけています。
課題と今後の展望
松本:現在の課題についてはいかがでしょうか?
北岡:最大の課題は専門人材の確保・育成です。現在、常勤スタッフは公認会計士バックグラウンドを持つ1名のみで、投資先のバックオフィス支援なども担当しています。徳島という地域特性から投資専門家の採用は難航しており、内製化に向けた取り組みが必要だと考えています。
松本:1号ファンドの満期が2030年3月ですが、今後のファンドレイズについてどのようにお考えですか?
北岡:2号ファンドの組成を視野に入れています。投資対象も、徳島大学に限定せずに徳島という地域での拡大や、四国全域への大学への展開も含めて検討しています。現在、高知大学でも同様のベンチャーキャピタルが設立されており、四国全体でのスタートアップエコシステム形成を目指したいと考えています。
松本:最後に、これからの展望をお聞かせください。
北岡:これまでは徳島大学発スタートアップの創出に専念してきましたが、今後は四国内の他大学との連携も視野に入れていきたいと考えています。研究シーズの事業化支援において、投資だけでなく経営支援や事業開発支援など、多面的なアプローチを展開することで、持続可能なエコシステムの形成を目指していきます。
写真(左から):株式会社産学連携キャピタル 取締役 北岡和義 氏、インデペンデンツクラブ代表理事 松本直人 氏
※「THE INDEPENDENTS」2025年1月号 P.17 より
※ 冊子掲載時点での情報です