「浜松のエコシステム」
<イベントレポート>
2024年11月22日 浜松インデペンデンツクラブ
@ アゴラ浜松
+ Zoom ウェビナー配信
■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/744
特別セッション『浜松のエコシステム』
静岡大学発ベンチャーの挑戦と未来:学生起業と研究シーズの事業化
静岡大学 イノベーション社会連携推進機構 産業連携推進部門長 鈴木 俊充 氏 |
現在静岡大学発ベンチャーは57社あり、その内の十数社が学生起業によるものです。大学の先生方が研究シーズの事業化に非常に意欲があり、GAPファンドを活用しつつ支援を行っています。
研究シーズの事業化としては、名古屋大学を中心に26大学で活動する「Tongali」プラットフォームに静岡県として参加し、起業活動支援を行っています。「Tongali X」では分野別GAPファンドの利用や仮設検証プログラムを進めています。また、大学として静大発ベンチャーに対してはイノベーション施設の提供や事業化までの伴走支援、法人登記や資金確保などその後のサポートを行っています。これらシード期のスタートアップ支援に加えて、アーリー・ミドル期では「Fuse」や「Hi-Cube」に繋げることで、地域と連携したスタートアップ育成を行っています。
アントレプレナーシップ教育としては、起業家育成プログラム「MOVE ON」や地域の起業部支援、高校生向けの講座の実施などを通して支援を行い、その先では「Tongali」と連携することでスタートアップの創出に繋げています。
今後の課題は成長期のCxO人材の確保やマッチングにあると考えています。地域の大企業に勤める方々やOB人材がスタートアップのサポーターになる仕組みを作っていく必要があります。また、浜松市の代表的な分野を発見し認知させていくことも重要です。「この分野で起業するなら浜松が良い」と誰もが思うような分野を作ることで、県内外から起業家を募ることができます。
今後は大学、行政、地域企業など垣根なく情報共有を進めることでサポート体制を整え、大学としてアントレプレナーシップマインドを醸成することを目指していきます。
ファンドサポート事業と「ハマハブ!」:浜松市のスタートアップ支援の最前線
浜松市 宮野 浩和 氏 |
浜松スタートアップ創出のエコシステムの確立、地域企業とスタートアップの融合による新たなイノベーションの創出を目指し様々な取り組みを行っています。
まず、代表的なスタートアップ支援としてファンドサポート事業があります。これは浜松市の認定VC(令和6年度:66社)が投資した市内スタートアップに対して交付金の交付を行うというものです。さらに認定金融機関(同:5社)がベンチャーデットを行ったスタートアップに対しても交付金の交付を行っています。ベンチャーデットの条件は、無担保・無補償で2年以上の融資であることです。これにより市内のスタートアップへ投資しやすい環境を整備しています。インキュベーションプログラムではVCがハンズオンで伴走支援し、出資に至った例もあります。今年度8月からは、スタートアップと地域企業の連携に繋がるマッチング環境を整備するための新しい取り組み「ハマハブ!」を始めました。
ファンドサポート事業および地域企業との連携の好例として、イチゴ栽培の自動化を行っているHarvestX社(本社:東京)が、浜松ファームを市内に設け、地元企業である春華堂との連携を実現しています。浜松市はファンドサポート事業やデット枠の設定など自治体のスタートアップ支援として常に先進的な取り組みを行ってきました。より一歩先を行くために、浜松市発のスタートアップが上場する先例を作ることや「ハマハブ!」を通じた地域企業との連携に挑戦していきます。
静岡県のスタートアップエコシステム:ボランティア支援と浜松モデルの拡大
静岡ベンチャースタートアップ協会 髙地 耕平 氏
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静岡県のスタートアップエコシステムを作るため完全ボランティアでスタートアップ支援を行っています。鈴木康友静岡県知事が知事就任前に立ち上げた団体で、先進的な取り組みを行ってきた浜松モデルを全県に広めたいと考え、政策提言も含めて様々な活動を行っています。6ヶ月間の起業家育成プログラムやスタートアップイベントへの協賛など、アントレプレナーシップ教育から伴走支援、コミュニティ形成まで取り組んでいます。
浜松市のファンドサポート事業の先のロードマップがクリアに見えていない点を様々なスタートアップ支援のプログラムとの連携を深める必要があります。東京プロマーケット市場の活用やM&AによるExitが進むことで、地域にエンジェル投資家を生み出したり、市内で先輩起業家が後輩起業家を育成するようになったりする好循環が作られることを期待しています。
会場の様子
※「THE INDEPENDENTS」2025年1月号 P.16 より
※ 冊子掲載時点での情報です