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「北海道北見市発ベンチャー企業の知財戦略と海外展開」

環境大善株式会社 代表取締役社長 窪之内 誠 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏


鮫島:知財業界では最高峰の賞である、今年度の「知財功労賞」経済産業大臣表彰(デザイン経営企業)受賞おめでとうございます。

窪之内:ありがとうございます。知財戦略、デザイン経営、事業承継の成功、地域創生への貢献など複数の要素が評価され、素晴らしい賞をいただけたことを大変嬉しく思っています。

鮫島:環境大善は、北海道北見市に本社を置く、牛の尿を発酵処理して得られる液体を活用した消臭液や土壌改良材の開発・販売を行う企業です。

窪之内:1990年代、北見市を流れる常呂川で、牛尿の流入による水質汚染問題が発生しました。この問題を受けて、農水省やJA、酪農家などが協力し、牛尿を発酵処理して無害化してから川に放流する事業が始まったのですが、発酵処理には費用がかかり、酪農家にとっては負担が大きかったという背景があります。そんな中、創業者である私の父が発酵処理した牛尿を畑に撒くと植物が良く育つことと消臭効果があることを発見しました。当初は消臭液として販売を開始し、その後土壌改良材としても販売するようになりました。


鮫島:2017年からは北見工業大学と共同研究を開始していますが、そのきっかけを教えてください。

窪之内:直接的なきっかけは、共同研究を通して自社製品の科学的裏付けを得るためでした。産学連携のメリットは、大学側の専門知識や設備を活用できる点だけではありません。共同研究やその講座を通して、北見工業大学の卒業生を新卒採用するなど人材雇用にも役立ちました。

鮫島:大学との共同研究では、自社独自の研究が流出しないよう契約を徹底して同等の立場で進める必要があります。
大学側のメリットや産学連携の成功要因について教えてください。

窪之内:特許の共同取得や論文の共同発表などが実現し、大学側の研究活動の促進にも役立っています。
環境大善から北見工業大学は車でわずか10分ほどの距離にあり、密なコミュニケーションや連携がしやすい環境が整っています。事前に契約を徹底し、研究を社会実装するという共通認識に基づいた研究を行った結果、独自の技術を確立し、サーキュラーエコノミーで成り立つアップサイクル型循環システムの完成にも繋がっています。地方都市における産学連携の成功事例として、関係省庁や他の企業からも注目を集めています。


鮫島:環境大善は、製品が液体物であり模倣品が出た場合の対応が難しいという事情を考慮した上で、ノウハウとして秘匿する部分と特許などで権利化する部分を明確に区別する戦略を取りました。

窪之内:ノウハウは社内でも限られた人員にのみ共有、特許は共同研究の成果で開示する判断をしたものに限定しています。また商標の取得にも力を入れ、2018年からアートディレクターと契約し、リブランディングに着手しました。 その結果、2021年9月に商品パッケージをリニューアルし、ニューヨークADC賞やグッドデザイン賞を受賞するなど高い評価を得ています。デザイン性の高いパッケージを採用することで、高品質な製品であることを消費者に視覚的に訴求し、競合製品との差別化を図ることができます。 

鮫島:農業資材をカンボジア、ベトナム、韓国などに、消臭スプレーを台湾、香港などに展開するなど海外進出にも積極的に取り組んでいます。

窪之内:海外展開においては、まずは商標取得を優先で行いました。その上で「北海道ブランド」を前面に押し出しています。

鮫島:特許取得からブランディングまで知財戦略が経営に大いに活かされていますね。

窪之内:知財功労賞を受賞してから様々な企業や団体から講演の依頼や相談を受けるようになりました。地方の中小企業のモデルケースとして私の経験を共有していきたいと考えています。

 

―「THE INDEPENDENTS」2024年10月号 P.12より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
  <話し手>
環境大善株式会社 代表取締役社長 窪之内 誠 氏
(→ イベント登壇情報

1976年1月30日生まれ。
北海道北見柏陽高等学校、北海学園北見大学(H18年4月北海学園北見大学から北海商科大学へ名称変更)出身。
牛の尿を微生物で分解し得られる液体を製品として利用する「アップサイクル型循環システム」を構築。
デザイン経営に取り組み2022年中小企業庁発行「中小企業白書」に掲載。
Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2022-2023部門賞受賞。
2024年知財功労賞「経済産業大臣表彰(デザイン経営企業)」を受賞。
 
環境大善株式会社
設 立:2006年2月9日
所在地:北海道北見市端野町三区438-7
資本金:1,000万円
事業内容:環境微生物群を発酵・培養した「善玉活性水」の消臭力・土壌改善などの効果に着目した商品開発、販売、製造 


   <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

 

環境大善株式会社

住所
北海道北見市端野町三区438-7
代表者
代表取締役 窪之内 誠
設立
2006年2月9日
資本金
1,000万円
従業員数
29名
事業内容
・環境微生物群を発酵・培養した「善玉活性水」の消臭力・土壌改善などの効果に着目した商品開発、販売、製造 ・木酢液を利用した商品開発、販売、製造 ・その他環境保全や改善に寄与する商品開発、製造
URL
https://kankyo-daizen.jp/
情報更新日
2024年9月20日

※上記は、情報更新日時点での情報です。