「特別セッション『北九州におけるスタートアップ支援』」
<イベントレポート>
2024年10月7日 インデペンデンツクラブ月例会
@ TiB
+ Zoom ウェビナー配信
■ イベント詳細 https://www.independents.jp/monthly-event/738
北九州市 産業経済局 未来産業推進部 スタートアップ推進課 石原 庸隆 氏 |
九州工業大学 社会実装本部 未来思考実証センター 大庭 英樹 氏 |
COMPASS小倉 事務局長 兼 スタートアップ支援責任者 福岡 広兵 氏 |
(モデレーター) 株式会社ABAKAM 代表取締役 インデペンデンツクラブ代表理事 松本 直人 氏 |
特別セッション レポート
■北九州市によるスタートアップ支援
石原:人口92万人、市内総生産3.7兆円の規模を持つ北九州市は、安川電機やTOTOなどの大企業の本社が所在し、出光興産や日産自動車の創業の地としても知られます。環境、ロボット、DX分野を中心にテック系エコシステム拠点都市の形成を目指しており、2023年度の新興スタートアップ企業の出現率は小倉北区と小倉南区で全国1位(同率)、八幡西区が4位を記録しました。市の取り組みとしては、小中学生向けのアントレプレナーシップ教育や、スタートアップ向けの資金支援、行政・市内企業等が抱える課題とスタートアップのマッチングなどの支援を展開しています。
■北九州市のスタートアップ創出目標と新戦略
石原:北九州市は2020年に内閣府からスタートアップエコシステム推進拠点都市に選定されました。5年間で革新的なスタートアップ企業100社の創出を目標とし、現在までに80社以上を達成しています。2024年3月には「産業振興未来戦略」を市で策定し、スタートアップ企業の誘致50社や、イグジット・資金調達に関する具体的なKPIを設定しました。
■九州工業大学による社会実装支援の新たな取り組み
大庭:九州工業大学では、2024年4月に「未来思考実証センター」という組織を新設し、アカデミアから創出されるアイデアを社会実装につなげる取り組みを本格化しました。来年には「未来テラス」という施設がオープンします。この施設には、基礎研究から実証試験までのマネジメントを行う運営事務所、スタートアップ企業のためのオープンオフィスフロア、連携機関用のシェアオフィスなどが設置される予定です。
さらに、既存の体育館を改造した「GYMLABO(2022年5月にオープン)」は、学生や企業が交流しながらアイデアを創出する場として提供しており、延べ利用者は4万人を超えています。また、「PARKS(https://www.parks-startup.jp/)」というエコシステムでは、18の大学が参画し、令和8年度末までに155社の起業を目指しています。アントレプレナーシップ教育にも注力しており、2021年度から学部生・大学院生向けのプログラムを開始しています。また、社会人向けのリカレント教育として、文部科学省認定の九工大子会社である「Kyutech ARISE」を設立しました。この組織を通じて、パートナー企業の人材を持続的に活用し、実践的な教育を提供しています。また、大学のマイクロ化総合技術センターと連携し、半導体分野の高度人材育成にも取り組んでいます。
■COMPASS小倉のスタートアップ支援
福岡:COMPASS小倉は、「日本一起業家に優しい場所」を目指し、2018年から本格的なスタートアップ支援を開始しました。累計で約4200回の創業相談を実施し、129社の法人設立に携わってきました。現在21社のスタートアップが入居し、関与した累計資金調達額は135億円に達しています。単なる「優しさ」ではなく、創業者と同じ目線で課題に向き合い、時には厳しく接するなど、実質的なサポートを重視することを意識しています。また、高校生や大学生向けのアントレプレナーシップ教育も実施しており、学生の課題解決能力やファイナンスリテラシーの向上にも貢献しています。
■北九州市にスタートアップが集まる理由
松本:スタートアップの方々は人材や顧客が集まる場所に会社を構える傾向にありますが、その中で北九州が選ばれる理由はなんでしょうか。
福岡:まず、人材面では、理工系人材が豊富です。特にインターンシップを通じた採用パイプラインが確立されており、技術系スタートアップにとって大きなメリットとなっています。顧客基盤については、製造業のDX需要が高いです。北九州市の製造業基盤をバックグラウンドとして、産業のデジタル化支援を行うスタートアップが集積しています。環境分野でも、「ゴミソリューションズ」のような企業が環境課題解決に取り組んでおり、事業機会が豊富です。資金調達環境については、コロナ禍以降、東京の投資資金が地方に流れるようになってきています。元々地域金融機関系のVCが存在し、さらに近日中に独立系VCの設立が予定されているなど、資金調達環境も徐々に整いつつあります。
(北九州市 石原 氏) | (九州工業大学 大庭 氏) | (左:COMPSSS小倉 福岡氏、 右:インデペンデンツクラブ 松本氏) |
※「THE INDEPENDENTS」2024年11月号 P.4 より
※ 冊子掲載時点での情報です