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「監査法人とインデペンデンツクラブの未来」

 

 

三優監査法人
名誉会長
杉田 純 氏 Sugita Jun

1972年早稲田大学第一政治経済学部卒業後、監査法人サンワ事務所(現・有限責任監査法人トーマツ)入所
1974年早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了
1976年公認会計士登録
1986年10月監査法人三優会計社(現・三優監査法人)設立
2015年11月インデペンデンツクラブ監事就任
2019年7月同理事、2024年9月副代表理事就任

 

 

インデペンデンツクラブ
代表理事
松本 直人 氏 Matsumoto Naoto

1980年3月23日生
大阪府立三国丘高校出身。神戸大学経済学部卒業
2002年フューチャーベンチャーキャピタル㈱入社
2016年1月同社代表取締役社長に就任
2022年7月㈱ABAKAM 設立、代表取締役就任(現任)
2023年3月㈱Kips 取締役就任
2024年9月インデペンデンツクラブ代表理事就任


「監査法人とインデペンデンツクラブの未来」

松本:本日は、インデペンデンツクラブ理事であり、数多くのIPO支援されてきた杉田先生にお話を伺います。よろしくお願いいたします。まずは、スタートアップも注目している監査法人業界の2024年現在のトレンドを教えてください。

杉田:コロナ禍以前から監査法人業界では人手不足が深刻化していましたが、この傾向は現在も続いています。加えて、金融庁も大手監査法人への検査を強化するなど、監査法人を巡る状況は厳しさを増しています。

松本:DX化が進んでいるというお話も耳にしますが、現状はどうなのでしょうか。

杉田:DX化自体は進んできています。監査ロボットの導入や電子インボイス制度への対応など、監査業務の効率化を図る動きは活発ですが、あと5年程度はかかる見込みです。また、DX化が進んでも、人材育成やコミュニケーション、セキュリティ対策など、人が関わる部分の重要性は変わりません。 例えば、コロナ禍で在宅勤務が普及しましたが、その一方で、会計士が現場で学ぶOJTの機会が減少し、人材育成の面で課題が生じています。また、コミュニケーション不足や、セキュリティ対策の甘さから、不正リスクが高まる可能性も懸念されています。


松本:次に、上場を目指すスタートアップ企業にとって、監査法人の選択は特に重要なポイントかと思いますが、どのような点に注意すべきでしょうか。

杉田:もちろん、監査法人の選定は重要ですが、それ以前に、上場を目指すスタートアップ企業の社長は、IPOに関する正しい知識を身につける必要があります。 そして、経験豊富な経理担当者と、IPO経験のある外部のコンサルタントを確保することが重要です。 アメリカではエンロン事件、日本ではカネボウ事件をきっかけに、監査法人が監査先企業に対してコンサルティング業務を行うことに制限がかけられるようになりました。 IPOを目指すなら、監査法人だけではなく、経験豊富な外部の力を借りることが重要です。

松本:具体的には、どのような方がいらっしゃるのでしょうか。

杉田:例えば、「株式公開準備コンサル」などで検索すると、コンサルティング会社が数多くヒットします。その会社のメンバーの経歴を見て、IPO支援実績が豊富な人材を探してみると良いでしょう。


松本:杉田先生は、インデペンデンツクラブの未来をどのようにお考えでしょうか。

杉田:インデペンデンツクラブは、これまで多くのスタートアップ企業を支援してきましたが、現状維持に甘んじることなく、時代の変化に合わせて進化していく必要があると考えています。 具体的には、CVCとの連携強化、事業計画発表会に参加するスタートアップ企業の多様化、コメンテーターの専門性向上、スタートアップの経営者向け研修などが考えられます。

松本: CVCとの連携強化は、具体的にどのようなイメージでしょうか。

杉田:事業計画発表会のコメンテーターや、理事会メンバーにCVC関係者を増やすことを想定しています。事業計画発表会にCVC関係者を増やすことで、スタートアップに資金調達の機会を提供できるだけでなく、CVC側にとっても有望な投資先を開拓する場を提供できるという、双方にとってメリットのある話です。また、事業計画発表会に参加するスタートアップについては、従来型のビジネスモデルだけでなく、AIやITなど、最先端技術を活用したスタートアップ企業にもっと多く参加してもらいたいと考えています。 そのためには、大学や研究機関との連携を強化し、革新的な技術を持つ企業を発掘していく必要があるでしょう。さらに、コメンテーターにCVC関係者を起用することで、技術的な観点からの評価やアドバイスも期待できます。

松本:技術的な専門家であるCVC関係者の意見が加わることで、事業計画発表会のレベルがさらに上がることは間違いありません。

杉田:そして、スタートアップの経営者向けに、経営に必要な知識やノウハウを習得できる研修プログラムなども実施すると良いと考えています。例えば、トップマネジメント、人事・組織、財務・資金調達など、企業経営に必要な幅広い分野をカバーする内容が考えられます。

松本:同じ方向性として、CFOやCTOなどテーマ別のセッションを行うことで専門的な知識や情報の共有を促進させることを想定しています。また、インデペンデンツクラブの理事企業とのコラボイベントを開催したいとも考えています。例えば、三優監査法人の方に登壇していただき、最近上場した会社の情報を共有してもらえれば、スタートアップの方々も非常に興味深いものになると考えています。

杉田:上場された企業の方にもご登壇いただく形でぜひ実現したいと思います。


interviewed by kips 2024.9.9


※「THE INDEPENDENTS」2024年10月号 P.11より
※ 冊子掲載時点での情報です