「特別セッション『帯広・北見・小樽地域における北海道の産学連携の取り組み』」

（モデレーター）
北海道大学 スタートアップ創出本部 副本部長　小野 裕之 氏
地域に根ざしたスタートアップ育成と持続可能な社会の実現を目指す「北海道未来創造スタートアップ育成相互支援ネットワーク（HSFC）」の帯広・北見・小樽地域における産学金連携の取り組みについて、食品産業、環境事業、教育研究機関、金融機関の各分野からの先進的な事例を紹介します。

株式会社山忠HD　常務取締役　池内 幸介 氏
■ 「食」を通じて地域社会に貢献する
　十勝・音更に本社を置く山忠HDグループは、豆類や小麦の集荷精選及び卸販売 を行う山本忠信商店を中核に、パン製造販売を行う「スタンダードベイカーズ東京」、障害者福祉事業として「とかちアークキッチン」を展開しています。
　新規事業創出支援として、地域活性化ファンド「コントレイル」を株式会社そらと共同設立し、資金提供だけでなく、社内ベンチャーやベンチャー企業での経験を活かしたアドバイスやサポートも行い、地域に企業や雇用を生み出すことを目指しています。

株式会社エースクリーン　代表取締役　中井 真太郎 氏
■ 環境と地域活性化に貢献する
　エースクリーンは北見市で事業系ごみ、家庭系ごみの収集、産業廃棄物の収集、住宅等の片付け、下水道等の清掃、浄化槽の清掃、維持管理、し尿の汲み取り、産業廃棄物中間処理施設の運営などを行っています。蒸煮木質飼料は、木材チップを高温高圧で蒸煮処理した飼料で牛の胃の中の微生物を増やし消化吸収を助け、地域資源の有効活用と畜産業の活性化に貢献を目指しています。
　北海道立林産試験場、帯広畜産大学、山形県畜産研究所などと連携し、品質向上や新規用途開発に取り組むと同時に、実践的な共同研究を通じて、優秀な人材との繋がりを築いています。道東地域の活性化を目的とした「一般社団法人ドット道東」を通じ、熱意ある若者と起業支援や雇用創出に繋げたいと考えています。

帯広畜産大学　副センター長・准教授　東 陽介 氏
■ 地域と世界に貢献する実践的な教育研究
　帯広畜産大学は、「食を支え、くらしを守る」を基本目標に掲げ、地域および国際社会に貢献するため、実践的な教育研究に力を注いでいます。十勝のキーパーソンから学ぶ「十勝学」や、地域企業の経営者に対するプレゼン「ガチ勉」、学生が酒造りを行う「酒造りプロジェクト」などがあり、学生が地域企のビジネス課題解決の機会を提供する「若者支援事業」にも注力しています。またNTT東日本との連携で、ICTを活用したスマート農畜産業モデルの実現にも取り組んでおり、帯広畜産大学は学生育成と地域社会への貢献を両立させ、持続可能な社会の実現を目指しています。

小樽商科大学　特任准教授　藤見 佳奈枝 氏
■ スタートアップエコシステム形成と人材育成
　小樽商科大学は、MBAプログラムを活かし、ビジネススクールの卒業生を中心に、起業志望者に対して実践的なビジネスサポートを提供しています。また、HSFCの共同機関として、地域のニーズに応じたアグリフード、環境エネルギー、ヘルスケア分野のスタートアップ創出を推進しています。道内外の学生に対しては、ビジネスプラン構築や地域課題解決をテーマとしたワークショップやイベントを開催し、実践的な学びの機会を提供しています。加えて、北海道経済産業局と包括連携協定を締結し、創業支援、人材育成、地域活性化を推進し、地域に根ざしたスタートアップ支援を行っています。

帯広信用金庫　地域経営サポート部　副部長　廣田 俊明 氏
■ 創業支援エコシステムの構築
　10年間で400名以上の起業家人材を輩出してきた実績を持つ「十勝イノベーションプログラム(TIP)」は、参加者同士のチーム形成やディスカッションを通じて事業アイデアをブラッシュアップしていく実践的なプログラム構成が特徴です。本当に実現したいこと(ウォンツ)を重視することで、参加者の起業を後押しします。また、創業融資の実行や資金繰り支援といった従来の金融サービスに加え、将来的にはファンド機能を持つ組織と連携した資金調達支援や、常駐職員による経営相談や創業サポートが受けられるインキュベーション施設の設立も検討しています。創業初期段階から事業成長まで切れ目なくサポートすることで、地域に根ざした強いスタートアップを育成していくことを目指しています。