「高精製度かつ高回収のエクソソーム精製・分離技術で医療にイノベーションを起こす」
株式会社Egret・Lab 代表取締役 矢野 慎一 氏
× 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
鮫島:Egret・Lab社は独自のエクソソーム精製技術を活用して事業を展開する徳島大学発ベンチャーです。
矢野:私たちの体内に無数に存在するエクソソーム(細胞外小胞)の内、間葉系幹細胞から放出されるそれは、細胞や組織等の修復・再生を促進します。また、組織保護・修復作用だけでなく、抗炎症作用や免疫調整作用などマルチに効果があるため、既存薬では治療できない難病を治癒できる可能性があるため注目度が非常に高まっています。
鮫島:エクソソームを活用するためには夾雑物(きょうざつぶつ)だらけの体液や培養液から精製する必要があり、それが市場拡大の大きな課題となっています。
矢野:この課題を解決する当社の技術が、高吸収性ポリマー(SAP)を用いた精製分離法(SAP法)です。まず培養液等にSAPを接触させると膨張します。その際に、溶液中の夾雑物がSAP内にトラップされると同時にエクソソームを表面にトラップします。その後塩析により表面から遊離させる方法です。このSAP法は現状広く使われる超遠心法と比較して、エクソソーム総回収量が10倍かつ夾雑物が少ない高い精製度を実現します。
鮫島:取得している特許の概要と、三洋化成工業との事業協業体制について教えてください。
矢野:2件の特許を取得しており、「SAPを用いた精製方法」と「エクソソームを精製するためのSAP」の二構成で取得した基本特許は当社で保有しています。これは日米欧の3カ国で取得しており、特定の事業領域に関して三洋化成工業と独占ライセンスの契約をしています。
鮫島:非常に注目度の高い分野ですが、今後どのように技術展開する予定ですか。
矢野:SAP法のパフォーマンスが存分に発揮できる相性のよい培養液をお持ちの協業相手を見つけ、それを突破口として各協業先と新たな市場を作っていこうと考えています。
鮫島:そのためのPoCに関しては有償で受託開発を行い、特許として開示するものとノウハウとしてブラックボックスにする事をしっかりと分ける知財体制構築がポイントになります。
矢野:私は四国TLOで愛媛大学と徳島大学のチームリーダーを経験し、18製品の事業化を達成しライセンス総額は1億8千万に及んでいます。そのため知財や法務に関する経験があります。また知財のライセンス化のみに留まらず、製品化率を上げるため企業の開発に入り込みKPIを設定する等のマネジメントを行ったり、地元企業等と新規事業の立案を行ったりしてきました。これらの経験を活かしてEgret・Labを創業しました。
鮫島:事業展開におけるターゲット市場と、そこへのアプローチ方法を教えてください。
矢野:現在、研究機関や企業向けに受託精製ビジネスを行っています。今後は、クリニックと連携し幹細胞治療の一部を担う細胞加工物製造許可業社に出張精製という形での展開や、その業者からの受託精製を行う形での展開を考えています。顧客開拓はバイオ商社のネットワークを通じ世界中の研究者をターゲットにしていきます。ターゲット市場は医療分野だけでなく、食品等の品質管理分野等も考えています。
※冊子掲載時点での情報です
<話し手> 株式会社Egret・Lab 矢野 慎一 氏 (→ イベント登壇情報) 生年月日:1979年2月23日 2001年近畿大学生物理工学部卒業し、(株)ジャストミートコーポレーション入社。教材の訪問販売にて、営業成績全国1位で表彰。 2004年にインターナショナルペイントに入社し、開発部門に配属され、水性塗料の4製品開発・上市に寄与。品質管理責任者も歴任。 2009年に(株)テクノネットワーク四国に入社し、大学特許の技術移転業務(営業、契約交渉・作成、特許戦略等)に従事。愛媛大学、徳島大学のリーダーを歴任し、これまでの製品上市数は18製品。ライセンス総額も約1.8億円に及ぶ。現在も在籍中。 設 立:2023年2月6日
所在地:徳島県徳島市八万町大坪191-1 資本金:6,400千円 事業内容:エクソソーム精製受託サービス |
<聞き手> 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏 1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。 1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。 1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。 1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。 1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。 2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。 |