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「北海道大学発のメカノケミカル有機合成で産業に変革を」

株式会社メカノクロス 代表取締役 齋藤 智久 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 高橋 正憲 氏


高橋:貴社は「メカノケミカル有機合成技術」を社会に実装することで、産業の効率化と世界の環境課題の解決を目指す北海道大学発ベンチャーです。

齋藤:私たちの中核技術は、北海道大学伊藤肇教授の研究室が開発したボールミル反応であり、この反応を種々溶液反応へと展開し、メカノ化反応に置き換える反応設計ができることにあります。石油由来の溶媒等による化学合成ではなく、機械的攪拌を用いるメカノケミカル合成方法を開発し、有機溶媒量の削減に加え、反応の高速化や操作の簡素化、コストダウンを可能にします。

高橋:業界の構造そのものを変革させる可能性がある非常に素晴らしい技術ですが、どのような点が画期的なのでしょうか。

齋藤:メカノケミカルを社会に実装することで、あらゆる製品の二酸化炭素排出量を大幅に削減することが可能になります。医薬品や半導体等の製造において、溶媒を使わないメカノケミカル有機合成を採用すれば、化学合成のプロセスの有機溶媒の使用量が極少量となります。
ある反応の一例ですが、二酸化炭素排出量を約90%削減でき、また、化学合成のコストダウンに貢献することもポイントであり、例えば以前まで合成プロセスにおいて、48時間かかっていた反応が、メカノケミカル反応によって5分で終わるようになる例がありました。


高橋:ビジネスモデルについてはどのようにお考えですか?

齋藤:基礎研究の成果をベースにプロセス導入までをコンサルしていきます。量産化検討においては、弊社でこれから開発する量産評価デバイスを用いて検証してまいります。生産においては、製造プロセスをライセンス供与していいきます。また、メカノケミカル有機合成でしか製造できない新規の機能性化合物や、製造ルートをライブラリーとして持ち、企業様に影響していくこも考えております。

高橋:画期的技術ですが、それをどのような分野に展開するか、マーケティング戦略が重要です。

齋藤:グローバルに巨大な市場が存在し、かつ日本に産業蓄積がある化学、製薬業界を初期ターゲットとし、脱炭素とコスト削減をアピールしていきます。宇宙では溶媒を使わないメカノケミカル法で、宇宙空間で化学合成によるモノづくりをしたいという声もあります。次に、化学系企業へは新規材料というポイントでのアピールを考えています。不溶性物質の新規化合物化などを売り込んでいくことが参入の狙い目だと思います。


高橋:脱炭素は世界のトレンドですが、海外展開への意識はありますか。

齋藤:グリーンテックが旺盛なヨーロッパにディストリビューターを設置予定です。化学メーカーが多いドイツを中心に技術営業人材の雇用を検討しています。


高橋:メカノケミカルを企業に導入する上での課題はありますか。

齋藤:導入にデバイスを含む量産化の問題が大きいです。まだメカノケミカル専用のデバイスがなく、現在は食品や穀物の粉砕用のボールミル装置を転用している状況です。この装置に企業の意向を反映させ、機能を追加したデバイスの開発を行い、最終的には量産化によるビジネスモデルの確立を目指しています。

 

高橋:北海道大学のスタートアップ支援に関わってきたので、今後も、北海道大学から、社会課題を解決するスタートアップが続々と生まれることを期待しています。

 

―「THE INDEPENDENTS」2024年6月号 P.5より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
  <話し手>
株式会社メカノクロス 齋藤 智久 氏
(→ イベント登壇情報
生年月日:1981年8月29日
2008年 北海道大学理学院(有機金属化学研究室 指導教官が伊藤肇先生)修士課程を修了。大手化学メーカーで、光学材料関連R&Dから製品設計、生産化までの一気通貫業務を担当し、アジア圏のお客様を担当。その後、同業務で、海外子会社のマネージメント業務として、欧州のお客様を担当した。2017年にエレクトロニクス関連の企画推進業務に従事。その後、新規事業開拓のためのマーケティング業務で、サーキュラーエコノミー事業の立案を経験。2020年から半導体材料と医薬関連事業を行う企業で、マネージメント職として新規事業創出業務に従事。半導体材料プロジェクト立ち上げ、アフリカにおける環境事業の立案、水上太陽光発電事業拡大のための環境アセスメント、などを経験。2023年11月に株式会社メカノクロスを設立し、CEOを務める。

株式会社メカノクロス
設立:2023年11月1日
所在地:札幌市中央区北五条西29丁目2-33
資本金:3,000千円 
事業内容:溶液反応のメカノ化技術の提供、不溶性高機能材料の開発・提供、メカノケミカル有機合成関連情報発信

 



   <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 高橋 正憲 氏
2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士34名・スタッフ16名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務

 

株式会社メカノクロス

住所
北海道札幌市中央区北五条西29丁目2番33号 THE TERRACE宮の森B号
代表者
代表取締役 齋藤 智久
設立
2023年11月1日
資本金
300万円
従業員数
4名
事業内容
溶液反応のメカノ化技術の提供、不溶性高機能材料の開発・提供、メカノケミカル有機合成関連情報発信
URL
https://mechanocross.com/