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「特別セッション『変化する未上場企業ファイナンス』」

 <イベントレポート>

2024年5月7日 インデペンデンツクラブ月例会
@ エムキューブ
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/722

 

■特別セッション:パネラー

   
大浦 学 氏
株式会社FUNDINNO
代表取締役CO
  大崎 貞和 氏
株式会社野村総合研究所
主任研究員
  <モデレーター>
國本 行彦 氏
株式会社Kips 代表取締役
インデペンデンツクラブ副代表理事
 
 
■特別セッション レポート

國本:まず、未上場株式の取引に関する近年の制度改革について、大崎様からご説明をいただきたいと思います。

 

大崎:2022年7月に、日本証券業協会(以下、日証協)はJ-Ships(特定投資家向け銘柄制度)という新制度を設立しました。従来、情報に乏しく流通性が低い未上場株式の投資リスクの危惧により、日証協は協会員証券会社による未上場株式の投資勧誘を禁止してきました。そのため、銀行の仲介による投資家と未上場企業のマッチングが何十年も続いてきました。この現状の転機となったのが、J-Shipsの創設です。これは、日証協へ特定の証券情報を提供することで、証券会社による未上場株式の投資勧誘が可能となる制度です。

國本:J-Shipsについて詳しくご解説お願いいたします。

 

大崎:J-Shipsを利用した投資勧誘を行える対象は、特定投資家に限定されています。特定投資家は2006年の金融商品取引法改正時に作られた制度で、適格機関投資家に加え、上場企業や資本金5億円以上の株式会社、証券会社、VCなどが含まれています。また、個人を含む一般投資家も、出資総額3億円以上の組合の業務執行者であることや、純資産3億円以上かつ投資資産3億円以上である等の要件を満たしている場合、特定投資家になることができます。しかし、厳しい基準により実際に特定投資家になった個人はおらず、制度の形骸化が現状でした。そこで、2022年7月の法改正で特定投資家への転換要件が大きく緩和されました。具体的には、金融や経営に関する職業経験や資格を有している個人であれば、純資産1億円以上または年収1千万円以上という要件で特定投資家の認定を受けることが可能となりました。

 

國本:特定投資家の要件緩和により、証券業界にどのような流れが生まれてくると思いますか。

 

大崎:特定投資家制度の周知が進み、証券会社が特定投資家向けの勧誘を推進するような経営方針へと転換することで、特定投資家の母数増加と特定投資家向け勧誘の活発化という好循環が生まれることを期待しています。

 

國本:特定投資家制度の活用に向け、未上場株PTSに関する制度が新たに施行されました。これはどのような制度になりますか。

 

大崎:未上場株PTSに関する新制度は、正式には「私設取引システムにおける未上場有価証券の取引等に関する規則」という名称で、日証協によって2023年7月に施行された制度です。特定投資家の緩和により未上場株式への投資が活発化すると、未上場株式の換金需要が高まっていきます。この換金需要への対応策として、PTS(私設電子取引システム)と呼ばれる簡易的な未上場株式取引所の設立を可能にする制度です。しかし、PTSの設立規制が非常に厳しく、現在まで未上場株PTSの開設は1件も行われていません。現在審議中の金融商品取引法改正案の成立により、PTSの規制緩和が期待されています。

 

國本:続いて、大浦様率いる株式会社FUNDINNOで提供している資金調達サービスについてご説明お願いします。

 

大浦:我々は、2015年の金融商品取引法改正で登場した、未上場株式特化型の証券会社ライセンスを一番初めに受けた会社です。スタートアップやベンチャーがインターネット上で資金調達できるサービスや、未上場株式の売買サービスを運営しています。以前までの未上場企業による資金調達では、投資家に対して実施する事業やリスク情報などの説明を企業自身が行ってきましたが、我々のサービスでは全てFUNDINNO側が行います。

國本:御社のサービス運営に設定されている法規制としてはどのようなものが挙げられますか。

 

大浦:我々が運営している株式投資型クラウドファンディングは、ベンチャー企業や未上場株式に対する投資をインターネット上での募集により資金を集める仕組みとなっており、未上場株式のリスクを抑えるためにいくつか制限が設けられております。まず、資金調達企業に対する規制として、大規模な資金調達の規制を目的に、年間の募集上限金額が1億円未満と定められています。また、投資家に対する制限もあり、1社に対する年間投資上限金額は50万円までとされています。そのため、弊社のファンディングは、小口投資により1社につき平均3000万円程度を調達するサービスとなっています。さらに、情報の不透明性や非対称性が強い未上場株式投資は詐欺の温床となりやすいため、対面での勧誘行為が金融庁の規制により禁止されています。したがって、株式投資型クラウドファンディングの勧誘はインターネット上でのみ行われます。

 

國本:大浦様にご説明いただいた法規制の緩和により、どのようなサービスが可能になりますか。

 

大浦:投資金額規制によりシード・アーリーステージの企業に限定されていた未上場株式投資が、法改正で特定投資家に限り無制限での投資が可能となりました。そのような特定投資家を、IPOが近いミドル・レイターステージの企業とマッチングさせる新サービスとして、FUNDINNO PLUSをリリースしました。また、J-Shipsの制度を利用したサービス展開にも注力しています。以前まで私募による未上場株式投資への勧誘可能人数は49人以下に規制されていましたが、現在では人数制限が撤廃され、より大きな金額が調達可能になりました。実際に、日本のユニコーン企業への支援を初のJ-Ships利用事例として昨年度実施しました。

 

※「THE INDEPENDENTS」2024年6月号 P.10-11より
※ 冊子掲載時点での情報です

株式会社FUNDINNO

住所
東京都港区芝5-29-11G-BASE田町3F
代表者
代表取締役CEO 柴原祐喜
設立
2015年11月26日
資本金
14億1847万円(資本準備金を含む)
従業員数
54人
事業内容
第一種少額電子募集取扱業務、FUNDINNO(ファンディーノ)の運営業務
URL
http://www.cloud-capital.co.jp/